2013/11/24

【Apple】SIMフリーiPhone発売の衝撃

◎誰も予想していなかったタイミングで、誰も予想していなかったものが発売された。
Apple Store SIMフリー版iPhone5s
Apple Store SIMフリー版iPhone5c
ドコモがiPhoneを発売したことで、日本でSIMフリーiPhoneを流通させるメリットはかなり小さくなっていたが、あえてこのタイミングで市場に出してきたのは何故だろうか。

◎SIMフリーによってユーザが得られるメリットは何か、考えてみると
・通信事業者と端末を切り離し、ユーザが自由にそれらを選択出来る
・海外で現地のSIMカードを使用する事により、高額な通話/データローミングを回避できる
…といったところだ。 このうち1点目については、日本の大手キャリアが全てiPhoneを扱うようになったことで、ユーザはキャリア選択の自由を得ている上、日本はキャリアとの継続契約のバーターに端末代金の一部をキャリアが肩代わりする為、コストの面でもキャリアに縛られているほうが有利である。
【各キャリアにおけるiPhoneの販売価格と2年間ランニングコスト】

【SIMフリーiPhoneを各キャリアで運用したときの2年間ランニングコスト】
MVNO事業者により回線負担を低減させるという方法もあるが、この方法も通話料金や通信速度の面で難点があるため、オールマイティな「電話・通信端末」としての使い道には向かない。
【日本通信SIMでSIMフリーiPhoneを運用した際の2年間ランニングコスト】
つまり普通の人には、今更SIMフリーiPhoneが出たところでそれをわざわざ購入する理由は無いのだ。

◎一方で、海外に出る機会の多い人にはかなり魅力的な端末になる。
通話にしろ通信にしろ、ローミングは非常に高い。参考までにNTTドコモの中国におけるローミングコストは
・通話:国内75分/円 日本125円/分 海外265円/分 着信145円/分
・通信:海外パケホ 最大2980円/日
というとんでもないコストになってしまう。また、電話をかける相手からしてもこちらへの電話は国際電話の扱いになる為これまた(現地の物価で)通話料が高く、自分にとっても相手にとっても気軽に利用できるものではない。
このため、特にプリペイドSIMが容易に入手できる国では現地のSIMカードと適当な(安価な)端末を買ってきて現地専用電話を確保する訳だが、日本語が扱えないため端末機能が理解できなかったり、電話帳の管理が面倒になったりという不便がある。

◎ここで普段使い慣れた端末を利用できれば飛躍的に利便性が高まる。私自身、昨年から何度も中国への出張を繰り返しているが、今年になってからXperia rayのSIMロックを外して現地のSIMカードで運用しており、特に電話帳の一元管理という点で非常に便利である。

◎日本ではこれまで、この利便性を実現する為にはNTTドコモのスマートフォンのSIMロックを外すか、高価な海外SIMフリー端末(場合によっては日本国内で使用できない)を利用するしか選択肢が無かったが、ここにAppleが自らSIMフリー端末を販売する事で、いわゆるBOYD(Business on Your Device)用途での需要を喚起する事が出来る。
今回AppleがSIMフリー端末を売る事にした真の狙いは、こういったある種のニッチ層までも含めて日本市場を攻略する戦略なのだろう。

◎そもそも3キャリアが同じ端末を売る事になった時点でSIMロックの必然性は薄れていたし、あれだけ自社サービスでの囲い込みにこだわっていたNTTドコモの陥落によって、「キャリアの要求仕様にあわせて端末を作り、キャリアに売ってもらう」というメーカの隷属構造も意味をなさなくなった。
そして今回のSIMフリー端末販売。 これは最早キャリアとメーカの力関係が逆転した事を如実に示している。
私が期待しているのは、この時流に乗ってこれまでキャリアの仕様に辛酸を嘗めていたグローバルメーカーが主導権を取り戻し、「端末の利便性に立脚した」魅力的な端末が日本市場に投入されて行く事だ。 そうなれば、ユーザにとってもメーカにとっても、しいてはキャリアにとっても「自由な競争」が実現するものと思っている。

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