2008/06/09

【Diary】報道は誰が為に 真実は誰が為に

BBC News|Asia-Pacific:Bewilderment in Tokyo after attack

The suspect is reported to have told police he was acting alone. He is quoted as saying he was "tired of life".
But inevitably once the focus shifts from the plight of those victims still being treated back to the attacker, questions will be asked about what could have driven a man to murder passers-by in a busy shopping street.
Can it be explained away as the action of a deranged individual which could not have been foreseen or prevented?
Or is it a symptom of something more disturbing in Japanese society, pressure or stress so great that it drives troubled people to commit terrible acts with tragic consequences?
◎BBCは問う。 何故彼を殺人に駆り立てたのか。 彼の行動を「狂人の凶行(action of a deranged individual)と片付けてしまって良いのか。
それに対し、国内マスコミの答えはこうだ。
FNNニュース:東京・秋葉原無差別殺傷事件 容疑者、事件3日前に職場で激怒、奇声発する
※容疑者名はあえて伏せました。 引用文も同様。
また、別の同僚によると、容疑者の部屋は、同人漫画誌が数冊ある程度で、物はなく殺風景だという。
そして容疑者は、カラオケでアニメソングばかりで、「アニメなど2次元世界にしか興味がない」と公言していたという。
日本のマスコミの質の低さ、思考停止ぶりは今更何も言う事は無いが、マスメディアの基本に立ち返ってみると彼らは「読み手が望む情報」を流す事が基本原則である。 つまり日本のマスメディアを読む人にとって、この事件はあくまでも「狂人の凶行」であることを望んでいる。 いや、そうでなければならない、そうでなくては困るのだ。

◎何が困るのか。 それはBBCが一つのヒントを呈している。
They blame the pressure people feel under - Japanese society can be intolerant of failure, or of difference.
If you do not fit in, do not get a job or do not behave like everyone else you can be ostracised.
Many worry too about growing inequality here.
People on the margins of society see a greater gap between themselves and those in work than perhaps there was before.
◎日本社会における狂信的な程の社会平等主義と、そこからのドロップアウターの行き場の無い閉塞感、マイノリティへの強迫的な畏怖。 BBCの着眼点は、我々日本人が皆目を背けたがる、自分自身が属する社会の矛盾と欺瞞を浮き彫りにしている。

◎そして我々はその社会に属するだけでなく,その社会を築き,その社会の中で暮らしている。 相対的貧困層の少ない日本においては、社会に依存する事で生と富を享受している。 たとえそれが矛盾や欺瞞や嘘に満ちあふれていても、それを否定する事は,自分の生存権を否定する事に他ならない。

◎マイノリティでも、ドロップアウターでも、酒でもタバコでもフィギュアでもゲームでも何でも良い。 何かスケープゴートを作らなければ、矛先は必ず「社会」に向き、その社会を構成・運営する要素…民主主義に置ける究極の構成要素は市民と企業とマスコミ、に向けられる。それは社会の改変を意味し、大多数に取って望まぬ「痛み」を要求する。
…それだけは避けなければならない。 自分が痛みを受ける前に。 これはもはや人間の原罪だ。

◎外様のBBCに真相を突かれて恥ずかしいと思う反面、その「恥ずかしい側面」に依存しなければ生きて行く事が出来ない「欺瞞のサバイバビリティ」。 BBCが最も世界に伝えたい事は、そのことなのかもしれない。

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