2008/06/08

【Favorite】IT素人が考えるM$のジレンマ

ITPro Research:OpenOffice.orgは22%、Google Docsは11%が使用,オフイス・ソフト利用調査

◎この記事の自由記入欄を見ていると、Vistaの評判も散々だが、Office2007の評判も散々のようで、特に変わり過ぎたユーザーインターフェース、複雑過ぎる機能実装、重すぎる動作に非難が集中しているようだ。 一方で機能・インターフェースの面ではとっくにレガシーの域に達しているOpenOffice.orgが脚光を浴びている。 何故こんな事になってしまっているのだろう? 顧客は先進機能を望んでいないのだろうか?

◎この問題を考えるのにぴったりの事例がある。 それはIE6だ。 IEは「第一次ブラウザ戦争」と呼ばれる競争に勝ち抜く為に様々な改良を施してきたが、IEの独占状態が確立された段階で、数年後にFIreFoxと言う新たなる競合相手が出てくるまで、その改良を完全に停滞させてしまった。
そりゃそうだ。 IEと言う何の利益にもならない無償ソフトの為に自社の開発者リソースを振り分けて、コストを払ってまで開発をさせる理由は無い。

◎そしてそれはOfficeやVistaも同じだ。 市場を独占してしまった段階でM$はその歩みを停滞させてしまっても全然問題ない。
しかしIEと決定的に違うのは「利益になる」点だ。 M$はOSやOfficeを売った金で利益を上げ、自社の開発者を食わせなければならない。 そしてその開発者を留め置くには、常に新しい分野・新しい技術へのチャレンジを継続させなければならない。
OfficeやOSで利益を上げるだけなら、最低限の改変や最適化設計による低ロード化等の「小手先の改良」で新バージョンを謳わせ、アップグレード料金を市場から巻き上げれば良い。(開発規模の小さいDTMソフトなんて、この傾向は顕著)
しかし、M$はそれをやるにはあまりにも開発セクション…と言うか企業の規模が大き過ぎる。 それこそ世界的トップ企業に勤めるM$の開発者にとって、新規性のない改良機能の実装、レガシーな機能の低ロード化に、果たしてどれだけの開発者が「やりがい」を見いだすだろうか?

◎既存機能の改良や低ロード化は、ハードウェアの世界に置き換えればまさにローコスト設計(VE)の世界だが、わざわざこの分野に好き好んで足を突っ込む設計者が居たら見てみたい。 それぐらい、レガシーの改良は「ツマラナイ」世界なのだ。
(まあこれは、教育の問題が大きいんだけど。 学校での技術者教育の過程で経済理論やコスト工学を教えてれば、また違うのだろう)
利益の為だけにお茶を濁す様な開発を続けていては、あっという間に自社の優秀な開発者が逃げ出しかねない。 それを防ぐには開発者が喜ぶ様なテーマが無いとダメなのだ。 しかも、大規模に。

◎しかし一方で、Officeのように機能がある程度完成域に達し、コモディティ化すればするほど、顧客はコンサバティブになり、「新しいもの」よりも「成熟したもの」を求める。 そしてそれはM$が理想とする製品開発のありかたと相反する。
ここでM$に、Appleのような「顧客が望んでいなかった、しかし実現すれば顧客に受け入れられるような」サプライズ・・・良い意味での「裏切り」が出来ればまだ良いが、それを開発するにはリスクが大きすぎ、そしてそのリスクを選択するにはM$は企業としても政治力としても大きすぎる。
そして更に言えば、なまじ一流の技術者を擁立するがゆえに、M$にはサプライズを起こすセンスも無い。 それはこれまでの製品を見ていれば明らかだ。

◎結局M$は、「顧客に受け入れられる製品作り」と、「自分を食わせていくための製品作り」という相反するジレンマの中で苦しんでいる状態と見える。そこから脱却するために取り組むべきことは、コンサバティブとなった自分自身を否定し、利益より自己満足を優先する社内の贅肉をそぎ落とし、モノ作りの自由度を手に入れることだ。 そしてそこから(Linuxや、OOoのように)顧客の明示的な要求を受け入れるか、(Appleのように)顧客が潜在的にすら気づいていない新機軸を開発するか、あるいはそのどちらにも属さない独自のモノ作り(それが何でどういう方法かは、私にもわからないが)を進めるかを選択すること、と考える。
何も出来ずにジレンマに苛まれたまま今の路線を続けるか、痛みを伴ってでも次世代の「Microsoft」に歩を進めるか・・・M$を見捨てたものとして、興味がある。
・・・って、私は株主でも経営者でもなんでもない、ただの一介のサラリーマンで、ただの利用者・消費者なんだけどね。

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