2006/02/10

【Sound Works】MOTIFの次を考える

◎唐突だが私は今年YAMAHAが恐らくMOTIF ESの後継機を出すと確信している。 理由は製品リリース周期だ。 YAMAHAのワークステーション・シンセサイザーは、大体2年~3年周期でそのフラッグシップモデルをリリースして来た。
ここ最近を見てもMOTIFが出たのが2001年、MOTIF ESが出たのが2003年だ。 2005年はフラッグシップ機のリリースは無かったので、出るとしたら今年の3~4四半期頃ではないかと睨んでいるのだ。

◎PCによる音楽製作環境が主となった現在でも、ワークステーション・シンセの市場は意外と元気だが、モデルを見ていると各社のワークステーションに対する考え方が浮かび上がってくる。
ワークステーションの代名詞ともいえるKORGは、本当の意味で【1台で音楽作成を完結させる】と言う明確なコンセプトを持っており、CDライティング機能、HDR機能等を貪欲に取り入れてきた。 オープンアーキテクチャーによるソフト機能拡張まで可能にしたOASYSは正にそんなKORGの思想の典型だろう。
Rolandは音楽作成と言うよりもライブパフォーマンス等に力を入れる事、そして【使いたい音色がすぐ呼び出せる音色ライブラリー】としての性格が強い。 SRXでの音色拡張等もその典型で、ソフトシンセでは管理が難しい膨大な音色ライブラリーを構築させることに主眼を置いているようだ。 が、PCとの親和性はそれほど高いとは言えないようだ。

◎ではYAMAHAはどうか。
YAMAHAがMOTIF以後徹底しているのは【基本機能の充実】【楽器としての完成度の高さ】、そして【PCとの親和性の高さ】ではないだろうか。 AWM2音源はEX5で開拓した【線の太い音】を継続しているし、サンプラーはループスライス/リミックス等音楽作成用の機能を充実させている。 シーケンサーはループ/パターンシーケンサー機能を搭載し、アルペジエイターも強力だ。
これらの充実した機能を、高い信頼性と素直で分かりやすい操作性(まぁ、マニュアルが判りにくいのが難点だが)にまとめあげている。
ただこれだけでは単に【小さくまとまったシンセ】でしかないのだが、そこにPCとの親和性と言うファクターが絡んでくる。

◎MOTIFにおいても最初からPC用音色エディター、サンプル波形用波形編集ソフト等を同梱し、PCでMOTIFをコントロールすると言う側面と、MOTIF側が持つリモートコントローラによる「MOTIFからPCをコントロールする」と言う両方の側面を併せ持っていた。
これがMOTIF-Rack、MOTIF-ESとなるとマルチモード機能が一気に引き上げられ、マルチティンバー外部音源としての使い勝手を向上させると共に、mLanやStudio Connections等によるPC~シンセサイザー間のコミュニケーション手段を着々と整えてきた。

◎これらの状況などを鑑みると、非常に大胆な予測(というか要望)ではあるが、01Xの機能を一部統合するというのはどうだろうか。
01Xの持つフィジカルコントロール機能とデジタルミキシング機能をシンセサイザーに統合し、シンセそのものをPCのオーディオI/Oとして動作させてしまう。 こうすると、ミックスダウンをPC側・シンセ側どちらでやるにしてもCPU負荷を相当低減させることができる。
(シンセ側で行うならミキシングの為のリソースを削減できるし、PC側の場合音源部のマルチが強力かつmLANによるパラアウトが可能なため、ソフトシンセやプラグインエフェクトの為のリソースを低減できる)
DAWのフィジカルコントロールも含めて可能なシンセとPCがIEEE1394ケーブル1本「のみ」で結ばれるなら、これほど強力な音楽作成ツールは無い。

◎また、PC側で動作させるエディターに関しても、音色作成やオフライン波形編集に限定せず、シンセ側の全パラメータをリモートコントロール出来るようにしてみてはどうだろうか。
例えばシーケンサ。 先述したように強力なパターンシーケンサを搭載してはいるが、シンセ単体ではどうしてもディスプレイの情報量不足やマウス/キーボード等が使用できないことによる作業的ストレスは大なり小なりある。
またサンプラーにしても、現状ではTWEで編集した波形をMOTIFに取り込む・キーバンクを作成する、等の作業はMOTIF側で行うことになり、シーケンサーと同様の「操作子の不足」と言う問題が発生する。
これらを解消する為に、PCにシンセサイザー側のほぼ全パラメータ(MIDIポートに関する設定だけはいじらせてはいけない。 これをやると、接続が保証できなくなからね)にアクセス・編集するリモートコントロールエディターを同梱するわけだ。
勿論PC側の画面に映し出された設定や設定値を変更した場合はシンセそのものがその動きに追従し、またシンセ側の操作子を操作した場合はエディター側もそれに追従する。 PCとシンセがお互いハンドシェークの状態となり、リアルタイムで両者を同期させながら「そのときやろうとしている作業において都合の良いほうの操作子」を使用して作業を行える環境を構築する、というわけだ。

◎これらはいずれも、従来のPC~シンセ間には無かった関係だ。 PCにはPCの優れた点、シンセにはシンセの優れた点があり、これまではどちらかというと「可能な範囲でお互いが補完するが、基本的には独立した存在」と言うスタンスだった。
しかしシンセがPCからの編集を受け付ける範囲を極力拡大しつつ、シンセ自身がPCをコントロールするための操作子・機能(ミキサー等)を持てば、両者の関係は独立でなく共栄共存、むしろ融合に近くなって来る。
音楽製作にPCの存在が切り離せなくなった今、シンセの側も自分の存在を主張して孤立化していくよりも、上記したような機能を積極的に取り入れながらPCとの「真の融合」…ソフトウェアの追加だけでは不可能なフィジカルな部分での統合環境化を目指していくのが良いのではないかと思う。

◎YAMAHAがどこまで「PCとワークステーションシンセの共存」を考えているのかは判らないが、01Xのような「PCとの融合を見据えた製品」を目指した製品作りをしていると願いたいし、何より今年の末頃には、それが具現化されていて欲しいと願う。

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