2013/11/28

【Gadget】 iPhoneの実勢価格を調べる

◎きっかけはツイッターで見かけたのこの記事だった。
新華経済:日本人はなぜ「サムスン」より「アップル」なのか?―中国メディア

記事中では日本における反韓感情や、Appleのブランド力(と日本人のブランド好き)によるもの、操作性の差によるiPhoneの優位性について触れ、
ツイッターではサムスンへの悪感情や日本人の同調圧力についての意見が出ていたが、
曲がりなりにも中国出張を繰り返しマーケットの状況を肌で見ていた身としては少し違う感想を持った。

「日本だと、iPhoneが安いからじゃないか?」

◎中国市場におけるiPhoneの販売価格は、かなり高い。
サムスンのGalaxy S4が中国移動通信版(TD-SCDMA)で4000元前後なのに対して、iPhone5cの16Gが4500元。5sとなればそれ以上だ。
香港でも似たようなもので、基本「iPhoneはトップブランド、次点がソニー、サムスンはそこまでの価格にはならないが機能的に同等で、背伸びをすれば買える値段設定」という所に落ち着いている。
では日本ではどうなのか。

◎私自身の感覚では「下手をすると日本ではiPhoneが一番安いんじゃないか?」と思っていたので、
この際なので2013年冬春モデルの販売価格を調査してみた。
が、日本はSIMロックでキャリアが実売価格を決定する上、回線契約のバーターとして端末代金の一部をキャリアが肩代わりする商習慣があるため、これを考慮した「実質負担金」で考える必要がある。
しかもこの実質負担金が契約形態によって違うため、それらすべてをマトリックスにする必要がある。
とりあえず、顧客が2年間で支払う端末代金を調べてみた。

◎で、調べた結果がこれだ。

トップモデルのiPhone5s 64Gを基準として、顧客の2年間の総支払額が基準を上回るものを赤く塗ってみたが…
なんと大半のモデルでiPhoneより高いという結果になってしまった。特にドコモの高さが際立つ。
一番高いモデル基準でこれなのだから、その他のiPhoneを選択する分にはさらに安くなる。
まさに日本は「iPhoneが一番安い」と言っても過言でない状況なのだ。

◎実はiPhoneやXperia Z1、Galaxy Note3といった「複数キャリアで販売されている端末」ですら、一括購入の価格がキャリアにより異なっている。 iPhoneの一括購入価格がとんでもない価格に設定されて市場から総スカンを食らったのは記憶に新しいところだ。
ただでさえ端末の価値に応じた価格設定がされていない上に、その価格がキャリア(売り手)の都合で決められているというのも、私が普段批判している「日本の携帯電話市場の歪み」の一つと言えるだろう。

◎更に言えば、多数の人が望む機能…端的には
・不必要な機能を搭載していない(その分安価な)端末
・操作が容易で解り易い端末
・コンパクトな端末
・安価な端末
…といった要求を、日本市場で満たしているのはiPhone5cなのである。
現状の端末仕様を比較してみると良い。ソニーが「コンパクト」と言い張るXperia Z1fですら、iPhoneより大きく分厚く重いのだ。
ブランド力だけでなく、多数の顧客が望む「必要な特性」を満たし、かつ最も安価な端末。これが売れない訳が無い。

◎逆の言い方をすれば日本におけるGalaxyはSBMがiPhoneの価格を破壊した上、ドコモにより「iPhoneへの当て馬」に仕立て上げられてしまった事が悲劇と言える。
ワンセグ搭載の為にシングルプロセサに換えられたり、誰が見るのか謎なNoTTVへの対応を強いられたり。
自社のセンスでの広告すら許されず、勧進帳のような製品紹介で何も伝わらない広告を強いられたり。

更にはプラダフォン山田やツートップ加藤といった無能経営陣、(直接関係ないが)ナントカ藤間のような無能マーケティング部隊により「iPhone対抗!」「サムスンとの蜜月関係!」ばかりが前面に出て、挙げ句の果てにはツートップ戦略により「日本の端末メーカを撤退に追いやった悪役」に仕立て上げられた為、完全に顧客にそっぽを向かれてしまった。 これは嫌韓感情というよりマーケティング戦略を完全に間違えたドコモの罪である。
(ついでに言えば、「価格の歪み」が最も大きいのもドコモである)

◎もし、中国市場のように、「iPhoneが高価」かつ「iPhoneより少し安い価格帯」で、「サムスンが本当に訴求したかった商品魅力をきちんと伝える」マーケティングが日本で展開されていたら、少し事情は違っただろう。

2013/11/24

【Apple】SIMフリーiPhone発売の衝撃

◎誰も予想していなかったタイミングで、誰も予想していなかったものが発売された。
Apple Store SIMフリー版iPhone5s
Apple Store SIMフリー版iPhone5c
ドコモがiPhoneを発売したことで、日本でSIMフリーiPhoneを流通させるメリットはかなり小さくなっていたが、あえてこのタイミングで市場に出してきたのは何故だろうか。

◎SIMフリーによってユーザが得られるメリットは何か、考えてみると
・通信事業者と端末を切り離し、ユーザが自由にそれらを選択出来る
・海外で現地のSIMカードを使用する事により、高額な通話/データローミングを回避できる
…といったところだ。 このうち1点目については、日本の大手キャリアが全てiPhoneを扱うようになったことで、ユーザはキャリア選択の自由を得ている上、日本はキャリアとの継続契約のバーターに端末代金の一部をキャリアが肩代わりする為、コストの面でもキャリアに縛られているほうが有利である。
【各キャリアにおけるiPhoneの販売価格と2年間ランニングコスト】

【SIMフリーiPhoneを各キャリアで運用したときの2年間ランニングコスト】
MVNO事業者により回線負担を低減させるという方法もあるが、この方法も通話料金や通信速度の面で難点があるため、オールマイティな「電話・通信端末」としての使い道には向かない。
【日本通信SIMでSIMフリーiPhoneを運用した際の2年間ランニングコスト】
つまり普通の人には、今更SIMフリーiPhoneが出たところでそれをわざわざ購入する理由は無いのだ。

◎一方で、海外に出る機会の多い人にはかなり魅力的な端末になる。
通話にしろ通信にしろ、ローミングは非常に高い。参考までにNTTドコモの中国におけるローミングコストは
・通話:国内75分/円 日本125円/分 海外265円/分 着信145円/分
・通信:海外パケホ 最大2980円/日
というとんでもないコストになってしまう。また、電話をかける相手からしてもこちらへの電話は国際電話の扱いになる為これまた(現地の物価で)通話料が高く、自分にとっても相手にとっても気軽に利用できるものではない。
このため、特にプリペイドSIMが容易に入手できる国では現地のSIMカードと適当な(安価な)端末を買ってきて現地専用電話を確保する訳だが、日本語が扱えないため端末機能が理解できなかったり、電話帳の管理が面倒になったりという不便がある。

◎ここで普段使い慣れた端末を利用できれば飛躍的に利便性が高まる。私自身、昨年から何度も中国への出張を繰り返しているが、今年になってからXperia rayのSIMロックを外して現地のSIMカードで運用しており、特に電話帳の一元管理という点で非常に便利である。

◎日本ではこれまで、この利便性を実現する為にはNTTドコモのスマートフォンのSIMロックを外すか、高価な海外SIMフリー端末(場合によっては日本国内で使用できない)を利用するしか選択肢が無かったが、ここにAppleが自らSIMフリー端末を販売する事で、いわゆるBOYD(Business on Your Device)用途での需要を喚起する事が出来る。
今回AppleがSIMフリー端末を売る事にした真の狙いは、こういったある種のニッチ層までも含めて日本市場を攻略する戦略なのだろう。

◎そもそも3キャリアが同じ端末を売る事になった時点でSIMロックの必然性は薄れていたし、あれだけ自社サービスでの囲い込みにこだわっていたNTTドコモの陥落によって、「キャリアの要求仕様にあわせて端末を作り、キャリアに売ってもらう」というメーカの隷属構造も意味をなさなくなった。
そして今回のSIMフリー端末販売。 これは最早キャリアとメーカの力関係が逆転した事を如実に示している。
私が期待しているのは、この時流に乗ってこれまでキャリアの仕様に辛酸を嘗めていたグローバルメーカーが主導権を取り戻し、「端末の利便性に立脚した」魅力的な端末が日本市場に投入されて行く事だ。 そうなれば、ユーザにとってもメーカにとっても、しいてはキャリアにとっても「自由な競争」が実現するものと思っている。

2013/11/11

【Maclife】 iPhone5s

購入品:iPhone5s 64G silver

iPhone4Sの購入からちょうど2年が経過、いい感じで電池もヘトヘトになってきていたので、中国出張からの帰国を機に購入。
4S買ったのがちょうど2年前の11月、月々割が終わるので、買い替えにはちょうどいいタイミングだった。
前回はブラックだったが今回はフィレット部の質感が良かったのでシルバーを選択。透明感のあるホワイトフェイスは、どことなくかつて持っていたiPod 5thを思い出す。
とはいったって純正カバーで結局ホームボタン以外のフィレットは隠れちゃうんだけどね!w

◎4sと比較して、まずその軽さに驚かされる。4sが歴代iPhoneの中でもかなりの重量級だったことを差引いても軽い。
しかし軽くてもその質感は失われておらず、きっちりと詰まった「中身」を感じることが出来る。
一方で4sまであった外周のアルミバンパー(兼アンテナ)が無くなっているので、しっかり握っていないとすぐ落としてしまいそうだ。
そこで純正カバーの登場である。本革のカバーは適度な硬さと肌触りで、「手に吸い付く」という表現がピッタリくる使い心地。4sの時からカバー類は純正を使っているが、今回のカバーもいい感じである。
ただ難点として、純正Dockは使えなくなる。ここは失敗だった…

◎パフォーマンスは…正直よくわからない。4sにiOS7突っ込んだら流石に動作に引っかかりを感じていたのでそれは解消されたが、もともとOSXもiOSも、「速さを実感しにくい」OSだけに、よくわからないw
電池も、へたってしまった4sからの乗り換えなので良く分からないが、それでも4s購入直後より保つかなあ、と言った感じ。

◎それよりも今回最も進化を感じたのがカメラである。画素数こそ4sから変わらないが、イメージセンサの大型化とレンズの明るさ向上、プロセサ高速化の恩恵で、ダイナミックレンジや高感度時の低ノイズ性が明らかに向上し、HDR撮影時のブレも小さくなった。
何せ、一眼レフでもキツかったライブハウスでの撮影が出来てしまうのだ。
また今回5s専用機能のバーストモードとスローモーション動画撮影、これも面白い。120fpsのフレームレートは伊達ではなく、誰でも簡単に微速度撮影やマトリックスごっこが楽しめる(笑)
このへんはおいおい使い道を考えていくことにしよう。

◎そしてもう一つはiLife・iWorkソフトウェアの無料解禁である。私はMacのほうには今はiWorkは入れていないが、Mac側でもiWork on iCloudを介することで、シームレスにワープロや表計算といったアプリを使えるようになり、iOSデバイスの使い出がぐっと広がった。
私自身は手持ちのデバイスでは仕事をしないポリシーだが、Blogの下書きや日常の書き物、計算と言った「ライトユース」なオフィスソフトとしてiWorkはとても手軽に使える。MS-Office程膨大に多機能でなく、まさにライトユースにはぴったりなのだ。このBlogの下書きも、半分以上はiPhoneから書いているのだ。

◎さて、次はiPadだな…一時期タブレットから離れてたけど、やはり寝床端末として、お茶タイムの暇つぶしとして、やはりタブレットが欲しくなってきた。(私はノートを持ち歩かない)

2013/09/23

【iPhone】ドコモがiPhoneを売る理由

○iPhone3Gが日本に上陸してから5年、やっとドコモからもiPhoneがリリースされた。 元々長年のドコモユーザーで、4Sを買うまで悔しい思いをした結果「妥協の産物として」SBMの回線を購入した私としては、本来手放しで喜ぶべき事象である。
しかし実際は、ドコモ回線をiPhone化するどころか、長年使ったドコモ回線を解約しようかと思う位に、「ドコモのiPhone」に興味が示せず、むしろ嫌悪感すらある。何故だろうか。あれほど焦がれていたのに。

○実のところ、今回のiPhoneリリース前に私はこんなことを言っていた。
https://twitter.com/pianist_danna/status/122247850078904320

天文学的確率でiPhoneがドコモで使用可能になったとしても、ガラスマの倍近い金額を吹っかけられる可能性が。 それぐらい信用できないし、そうしたとしても驚かない
https://twitter.com/pianist_danna/status/142060759009067008
仮に出るにしても初期のBlackBerryやHTC端末のような色物扱いされても驚かない。MMS非対応とか。
これらは1年以上前のツイートだが、実際その通りになってしまった。販売価格はハネ上げられ、サービスは中途半端な状態からスタート(これは他キャリアもそうだったが)
そして何より驚いたのが今回扱うショップを限定している事だ。 山手線内側の地下鉄駅前という立地条件にも関わらず、ウチの最寄りのドコモショップはiPhoneは予約含めて取り扱いを行っていない。お陰で他キャリアショップが盛況な中、完全な閑古鳥だ。
このような事が今までドコモが取り扱ってきた「自社ファミリーの新製品」…まして先日のツートップ戦略(笑)で、極論サムスン端末であっただろうか?
一方、この売り方には既視感がある。先のツイートでも指摘している、HTCやBlackBerry、 ガラケ時代の「pro」シリーズでやってきたことだ。

○これだけでも、ドコモが如何にiPhoneを「売りたくないか」が判る。
それはそうだろう。 他社より高いARPUを設定してもツートップや月サポという過剰経費に食われて増収減益決算が続くドコモにとって、今や収益のカギはコンテンツ・サービス収入しか無い。一方でiPhoneはそれらのコンテンツビジネスについては、ドコモに何ら利益をもたらさない。
未だにiモードの成功体験から抜けられず「土管屋としてのビジネススタイル」が確立出来ていないドコモに取って、iPhoneを取り扱うという行為は自分の首を絞めるのだ。
特に(恐らくは政治的な側面から)余りにも大規模な設備投資により「始まる前から失敗が確定している」NoTTVなどは風前の灯火であろう。

○さらにもう一つの危険性として、「ドコモの要求仕様に何ら合致しない」iPhoneという端末が売れてしまった場合、ドコモ要求仕様に合わせる事が端末メーカの利益にならないという証左となってしまう。こうなると、最早ドコモが持っていた「端末メーカへの政治力」は失われる。
それでなくてもツートップという愚策によってファミリー企業に冷や水をぶっかけた上、ドコモ自らが自社の要求仕様に価値がなかった事を証明してしまったら、ドコモに追随を余儀なくされていたメーカー…特にソニモバが黙っていないだろう。
今回ソニモバが海外モデルと同じ「Z1」という型番でキャリアの発売前から国内プロモーションを始めたのはその布石と見ている。

○だからこそ、ドコモは本音ではiPhoneを売りたくないのだ。
では何故今回iPhoneを取り扱う事にしたのか。 キーになるのは、ツートップ策以後の、親会社NTTの動きである。

NTT社長「『さみしい』が率直な気持ち」 国内電機スマホ断念
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL050PE_V00C13A8000000/
国内電機メーカーにスマートフォン(スマホ)の開発を断念する動きが出ていることを「『さみしい』、『残念』が率直な気持ち」と述べた。7月31日にはNTTグループとともに携帯事業を伸ばしてきたNEC(6701)がスマホ事業から撤退すると発表している。
NTTからしてみれば、ドコモがツートップでやったこと、そしてその責任を「メーカの品質」に責任転嫁したことは、親会社NTTが育ててきた「電電公社ファミリー」に泥を塗る行為でしかなく、下手をすればNTT本体のビジネスにすら影響を及ぼしかねない、政治的には軽率な行為であった。
この報道の後NTTは自社のドコモMVNOを利用したiPhoneパックを発売したり、副社長がドコモでの取り扱いについてコメントを出したりと外部からプレッシャーをかけていた。
ツートップ戦略は増収減益によるドコモ本体へのダメージの他、親会社NTTを怒らせるという政治的ダメージをも負わせたと私は見ている。

○そしてこれらの迷走ぶりと、「殿様商売」という単語に揶揄されるドコモの身の程知らずなビジネス戦略が、私に嫌悪感と失望感を負わせていたのだろう。
ともあれiPhoneの発売は現実として始まった。
ドコモとしては意図的に売らない事で「たいして売れなかったのでやっぱ撤退します」ぐらいの軟着陸を目指しているのではないかな、と勘ぐっているが、
私は逆に徹底的に売れて、ドコモが日本の携帯電話市場を歪めてきた「仕様の押しつけ」「望まないサービスの押しつけ」という呪いを解放させて欲しい。
判で押したような同じデザイン・同じサービスの端末を横並びで売るのではなく、メーカが各々のフィロソフィを持って製品を作り出して競争する、その方が確実に市場は面白くなり、製品の魅力は増して行く。(Xperiaはグローバル市場を相手にする事で自社のフィロソフィを確立した)

【iPhone】iPhone5S/5Cに思った事


○なんだかんだで順当に発表されたiPhone5sと、結局はリーク情報通りに出てしまったiPhone5c。そしてその急激な変化がユーザを動揺させたiOS7。京は銀座に出かけてこれらの変化がいかようなものかを見てきた。

○まず5S。基本的なデザインはiPhone5から変更が無いが、全体的に5よりさらに金属感が増し、前回私がちょっと不満だったブラック(グレー)モデルの質感が大幅に変わった。「スペースグレー」という名前の通り黒というよりグレー主体の色合いになり、光沢を持つフィレット部はよりメタリックな光沢を放つようになった。
iPhone5の頃にAppleは自社製品の能書きに「腕時計のような」「工芸品のような」という表現を使っていたが、5sのデザインモチーフはまさに腕時計のそれであろう。
今回新たに加わったシャンパンゴールドも最初は違和感しか無かったが、金の腕時計をモチーフにしたと考えれば納得は行く。まあ、金時計程「うるさく」はなく、嫌みな感じはしない。

○そして今回新型の5c。最初はプラスチック(ポリカーボネート)ボディということで安っぽさを懸念して居たが、実際触ってみると「触感」としては安っぽさは全く感じない。恐らく内部フレームとポリカボボディを密着させているのだろう。既存のプラボディ端末にある、「触って判る中の空洞感」が全く無く、見た目にも触った感じにも「ソリッドな」質感を持っている。
見た目の安っぽさはどうしようもないが…
5sより重いとして批判の対象になっている重量についてだが、4sユーザーからすれば軽いもの、というか、特に重さが気になるような重量ではない。
中身については完全にiPhone5なので今更語る事も無い。

○iOS7については、私のiPhone4Sには既に導入済み。
まあなんというか…旧来のiOSからすると完全に「別物」である。デザインのみならず、操作系も結構変わっているので、iOS6基準で考えてしまうと「使い難い」と思うかもしれない。
が、頭を一度リセットして、これが初めてのiOSだと思えば、 ーMicrosoft Officeが2007で操作性を完全に刷新したときと同じようにー 操作性を一から見直した上で、初めて使う人も使いこなしている人も「フラットに」使いこなせる操作性である事に気づく。
Officeの時もそうだったが、ヘビーユーザーにとっての操作性が必ずしも万人に、殊にエントリユーザにとっても使い易い物ではなく、むしろエントリユーザを基準に置くならばヘビーユーザーが好んで使う「効率の良い操作性」は、「多少効率が落ちてでも、判り易くシンプルな使い方」に収束して行くという考え方を見る事が出来る。

○全体を通している事は、Appleは今回のiPhone/iOSでまたひとつファッションブランドへの方向性を進み始めたな、という印象。5Sの目指している物は高級な工芸品、5cはサブブランド的な「ポップな」製品、そしてiOSは恐らく今まで誰もアプローチしようとしなかった「工芸品的側面を持つオpレーションシステム」、という方向性を持ったんだな、というのが私の感想。
スティーブ・ジョブス時代から、マーケティング手法の面でアパレル・ブランドを意識した取り組みはあったが、現体制になってそれを製品にも生かして行こうという「方向性」が、ジョブスの死から2年経って、やっと見えてきたか、というところだ。
勿論ジョブス時代の常に刺激的かつ革新的な製品の出し方も良かったが、今Appleが進んでいる方向性も私は嫌いではない。何故ならコンピュータというものそのものが、ある種進化の行き詰まりに直面してきているからだ。

○携帯電話というデバイスは、種々に存在していたスタンドアロンのデバイスをどんどんと吸収し、PCが持ち合わせていた「情報を受ける・発信する」という側面をも取り込んだ事で今のスマートフォンという形に落ち着いた。携帯電話がその途上にあるうちは何か別の物を取り込む…「別のもの(例えばカメラ)のあり方が変わる」という形での革新性を示していたが、正直もう取り込むべき概念が品切れになってきている。
ソフトウェアを活用しての「デマンドの取り込み」…例えばPassbook等の変化はあろうが、それは見え難く、また使ってみないと判らない。
人は何だ彼んだ言いつつも目に見える「ハードウェアの革新」を無意識に求めており、Appleはその潮流に「必要充分なリソースを持ったハードウェア」を持って乗る事で革新性を示してきた。
(概念の革新性だけなら、日本のガラケのほうが余程革新的だ ガラケに足りなかったのは、概念を実現するに足りる信頼性のあるハードウェアリソースである)

○もう取り込むネタが無い以上、次にやって来る革新はGoogle Glassに代表されるような「デバイスそのもののあり方の変化」だが、残念ながら今はまだウェアラブル・コンピュータを実現出来る程にはハードウェアの技術革新が進んでいない。
ラボラトリーで実現可能でも、それで世の中を変えるには「ビジネスとして成り立つ実用性」が無ければ意味が無い。
私はまだGoogle Glassはその段階に達していないと見ている。(あくまで今の所は、だ)
ならば、と今Appleがやろうとしていることはビジネスの強化である。 具体的には「技術の革新性に頼らない、自社ビジネスの付加価値の向上」である。これはこれで評価したいし、元々「技術だけで付加価値を示してきたわけではない」Appleだからこそできるビジネススタイルだ。

○とりあえず早く11月が来て欲しい所である。(11月に買い替え予定)

2013/08/28

【Music Works】Logic Pro X

◎人が中国出張してる間に何気にバージョンアップしたLogic Pro X。 帰国してさっそくアップデートしてみた。(MainStageも)
今回は恐らくVer8でのシングルウィンドウ導入以来の大幅な変更となる。というかLogicって基本的に偶数バージョンで大きく変わるのだが、今回はスキンを初めとした操作性に関する部分での変更が大きく、より「Appleのソフトウェア」という側面が強くなり、Appleが他に開発してきたソフトウェアの操作・概念を大きく取り込んだものになった。
今回大幅に変更されたスキン関係は、よく見るとそのレイアウトはGaragebandのそれがベースになっていることが判るし、
SmartControlは、MainStageのコントローラアサインメントをほぼそのままLogicに移植したものとなっている。
まだ触っていないが、Remote Logicを使う事で、iOS版Garagebandの操作性までも取り込んでいる。
Ver8でシングルウィンドウスキンが導入された際も、当時のiLife/iWorkの概念を大きく取り入れていたが、今回は更に踏み込んでAppleプロダクト化↓と言って良いだろう。


◎スキン絡みでもう一つ大きく変わったのがミキサー。ミキサー周りはVer7の頃から殆ど変更がなかったが、パーツのレイアウトこそ変わらないものの、それぞれのパーツは写実的な、モダンなものに変更された。特にレベルメータは従来のニキシー管風のものから通常のLCDタイプに、レベル(数値)表示も見やすくなった。
また今回小さいけれどうれしい変更がゲインリダクションインジケータの追加。前からあったEQのカーブ表示と合わせて、ミキサーセッティングの監視がより楽になった。
またプラグインのオンオフ/セッティング/タイプ変更がマウスオーバーで選べるようになり、並べ替えもドラッグだけで行えるようになったため飛躍的に操作性が上がっている。

◎その他の新機能の能書きについては公式ページに譲るとして、個人的に最大の変更点は今回新音源のDrumkit Designer。
中身は最近流行のドラム音源をまるごと入れたようなもので、通常のステレオミックスダウン音源の他、一つ一つのマイク(スネアの裏表、オーバートップ、アンビエント等)を個別に調整したり、
ドラムキットを構成する打楽器のピッチ/共鳴調整、果ては打楽器そのものを入れ替えてオリジナルのドラムキットを作る事も可能。
特にオーバートップやアンビエントマイクは、従来のサンプル音源ドラムにはなかった空気感を簡単に再現してくれる。(各打楽器マイクへのカブリまで再現する芸の細かさ!)
アンビエントマイクのルームタイプがステレオ/モノラルしか選べないとか、ドラムの種類そのものがそれほど多くないという難点はあるものの、
カブリやアンビエントを含めたマルチマイクドラムをMIDIベースで、追加音源無しで扱えること、そしてそのクオリティの高さは脱帽モノ。
正直これだけのためにバージョンアップをしても良いぐらいだ。

◎あともう一つ地味に大きな変更点がTrack Stack。従来からあった「フォルダ」の拡張で、従来の「フォルダ」は複数トラックのリージョンを見かけ上一つのトラックにまとめるものだったが、今回のTrack Stackは、言うなればグループバスの導入である。
内部的には集約対象のトラックの出力を全て特定のAUXにまとめた上で、見かけ上「集約先のAUX」にトラックを集約させるというものだが、
従来のフォルダと違う点として、集約先のトラック自体をオーディオトラックとしてプラグインを使用出来る事、
集約先のトラック自体にMIDIリージョンを持たせられる点だ。
特に後者はDrumkit DesignerのProducer kitや、UltraBeatのマルチ出力をこれによって実現している。

◎そしてもう一つ、Flex Pitch。 ロクなピッチ補正プラグインを持たなかった事が従来のLogicの弱点だったが、プラグインではなく編集機能としてピッチ編集が出来るようになった。
Flex Pitchをオンにするとオーディオトラックのピッチ解析が行われ、解析結果がピアノロールの形で波形の上に重ねて表示される。あとはピアノロール上で基準ピッチの補正の他、アタック/リリース部のピッチドリフト補正/ビブラート(同一母音内のピッチの揺れ)等を補正できる。
これらは「歌い手のクセ」を残したまま、音ハズレを許容範囲に収めるという芸当が出来るという事だ。
また「Pitch」と名前がついているが、タイミング補正も出来る。
ちなみにビブラート/ピッチドリフトを「0%」に設定すると、初音ミクごっこができるし、アタック側のピッチドリフトを極端な値に設定すればPerfumeごっこ(中田ヤスタカごっこ)も出来る。

2013/08/09

【Maclife】Apple TV

◎前から買おうかどうしようかずーっと考えていたApple TVをついに購入。
というのも6月に新居のエアコンを新調したらヨドバシのポイントが10%も還元され、ほとんど追加料金無しで買えるぐらいのポイントになったので、これ幸いと購入…
…と思ったらここんところの円安差損でケーブル代含め3000円程発生。
まあ、3000円で買えれば安いもんか。

◎日本ではあまり有効なコンテンツがないApple TVを何故態々買ったのか?
それはAirPlayのためである。
ウチにはリビングオーディオと呼べる環境は既に無く、普段はTVに接続してあるZinoからTVで音声を出すか、Mac/iPhoneからの音声をJANBOXで鳴らしていたのだが、これもある意味妥協の産物。
最初にiPodに移行してからずっとやろうと思っていた「手元のiPodライブラリの楽曲をリビングで鳴らす」がやっと実現出来るようになった訳だ。
…Airmac Expressを買えばすぐ実現出来た事ではあるが、流石にAirPlayのレシーバとしてだけに8000円は高過ぎるだろ…と。
その点Apple TVはさらに2000円程高いが、ポイントで買ってるし、AirmacExpressにはない付加機能がいろいろあるのでお得ちゃお得である。

◎さてこのApple TV、NFLやWSJといったネットワークブロードキャストを除くと、アクセス出来るコンテンツは基本iCloudのそれになる。具体的には
・iTunesで購入し、iCloudの同期対象になっている音楽・ビデオ・ポッドキャスト等
・フォトストリーム
…となる。初代Apple TVは本体に膨大なストレージを持ち、母艦iTunesのデータを片っ端から吸い上げて再生する仕様だったが、今回の奴はデータの実体はiCloud側にあるというわけだ。
(Appleは仕様を公開していないが、Apple TV側のローカルストレージはかなり小さいものだろう)

◎単体ではこれだけだが、ホームシェアリングが設定されたiTunesが起動していれば、iTunes側のコンテンツをリアルタイムにネットで吸い上げて再生してくれる。
また、iOSデバイス/Mac側のAirPlay出力先をApple TVに設定すれば、デバイスの音楽/動画を再生してくれる。
面白いのは「ミラーリング」も含めたAirPlay時の挙動で、これがローカルコンテンツ再生時の挙動と差異がほぼ無いこと。
唯一違うのはApple Remoteでのコントロールが出来ない事だが、ここでApple Remoteの代わりにiPhoneに「Remote」アプリを組み込むと、本当に挙動に差異が無くなってしまうw

◎音楽再生だと再生元がどこであろうとアルバムアートワークや曲名・プログレスバーが同じように表示され、手元のiPhoneで曲コントロールが可能。
写真や動画のミラーリング再生ではTVに映し出された写真や動画をiPhoneで選択・コントロールするなど、使っている状況だけを見ると完全にiPhoneがリモコンになっている。
…実際はiPhoneからデータは再生されているのだが。
ヤマハだったかが自社技術でiPhoneを事実上のリモコン化させるAVレシーバーを開発していたと思うが、それどころの比ではない。 見た目だけは完全にiPhoneがリモコンだ。
iPhone自体がコンテンツ再生・データ送信をしているので電池が減って行くという難点はあるものの、「完全なシームレス環境」を実現してるのは凄いの一言。
下手にAirPlayで外部スピーカに再生させるよりも俄然使い易い。

◎もう一つ、Mountain Lionの機能である「MacのAirPlayミラーリング」だが、こちらでミラーリングされるのは画面情報のみで、その状態ではApple TV側のコンテンツ再生は全て停止される。(音声も)
私は今の所これの有効な使い道が見当たらないが、これもiPhotoやApertureで写真編集をやる人等には重宝されるだろう。感覚的には液プロへの画面表示をワイヤレスでやるようなもんだ。
個人的にはミラーリングでなく拡張デスクトップとして機能してくれると非常に有り難いのだが…

◎そんなわけで購入前には半信半疑だったApple TV、いざ導入してみると超絶便利なデバイスであることが判った訳だが、お陰でウチのサブ機であるinspiron Zinoの出番が無くなってしまったw
まあ、Zino自体購入してもうそろそろ3年になるわけで、そろそろ次の環境構築を検討せねばならん時期に来ているので、丁度良い切欠かもしれない。
…ああ、また金が飛ぶなぁ…

2013/05/09

【Music Works】 久々の新曲「僕の知らない誰かが」


◎何年振りの新曲だろう… と言うか、この曲自体Garageband for iOSをダウンロードした直後に作り始めて、気がつけば2年近くが経過していたという…

確かこの曲を思いついたのは2年程前、三社祭に向かう電車の中でのことだった。
頭の中がどういうスイッチングしたのかは判らないが
「僕の知らない誰かが君を連れ去って行く それでも僕は生きて行こう 泣きながら 笑いながら」
こんな感じの言葉のフレーズが頭を過って、それを膨らませて作ったのがコレ。
Garageband for iOSの「あまり多様なコードを使えない」という制約がかえって良い方向に働いて、結果的にかなりシンプルな曲になった。

◎しかしPC使用のDTMではReal Guitarを使用しないとなかなか表現できないアコースティックギターの表情が簡単に出せてしまう(特に今回はオートプレイをそのまま使用)のは驚き。基本ピアノ弾きでギターを生で演奏する事が出来ない私にとってこのアコギのクオリティは有り難い。先のエントリで書いたがこれでも22.05kHzのサンプルなのだ。

◎この曲作成したのは間違いなくGarageband for iOSなのだが、一応今回アップロードするにあたって一度Logicに書き出し、メロディラインの音色の変更のみ行った。元曲は良くわからないシンセの音色で鳴っているのだが、やはり私の曲はメロディラインがこの音色でないとw

2013/05/04

【Music Works】Garageband for iOSに見るソフトシンセの構造

◎技術の進歩というものはありがたいもので、今やスマートフォンで作曲が出来る時代である。しかも、内臓音源のクオリティもなかなか悪くない。
最近使い倒している中で、Garageband for iOSのスマートギターが、ギターの音域外だとパワーコードストラミング音が出たり、ベロシティによるマルチサンプル再生に対応していたりと、音色クオリティや表現力と言った意味では既にかつての「DTM音源」を凌駕するレベルに有る事に気がついたのだが、これをモバイルデバイスで実現させるカラクリに少し興味を持ち、波形解析をしてみる事にした。


◎波形解析と言っても別に難しい事は何も無く、SmartGuitarを含んだ曲ファイルを書き出してLogic Proで読み込み→音源をEXS24に切り替えてEXS上にサンプルを展開→EXSのエディタでゾーンやマッピングを確認するだけのことだ。
が、ここで面白い事実に気がついた。波形ファイルが一つしか無いのだ。その波形がこれ。

SmartGuitarにおいてこの単一のサンプルファイルの鍵盤やベロシティによって波形の読み出し位置を変えることでマルチサンプル発音を実現しているわけだ。確かにこの方法だとファイルを細分化するよりもストレージメモリの使用量を削減出来る。
ちなみにサンプルレートは22.05kHzと意外に低いが、サンプル数が多いため容量としては26Mにも及ぶ。

◎ここで興味深いのは、一つ一つのサンプルは発音から消音まで収録されていること。PCMシンセサイザーでは一般的なループ処理がない。EXSエディタで確認してみたが、サンプルの再生でループは行っていないのだ。当然そんなことをすれば26Mもの波形容量を食ってしまうのも理解できる。ちなみにピアノは100M近くに及び、こちらもノンループ。(ただしダンパーオン音色はない)
サウンドクオリティをそこまで高くする必要がないはずのソフトにしてはかなり贅沢な仕様だが、何故このような仕様にしているかを考えてみるとスマートデバイスアプリならではの苦労が分かる。サンプルのループ処理を行うと、確かに波形容量が減らせるが、発音エンジンにエンベロープを組み込む事が必須となる。メモリの負荷が減る代わりに、プロセサの負荷が増えてしまうのだ。

◎ただでさえ電池駆動時間という制約のあるスマートデバイスでプロセサ負荷を増やすのは好ましくない。一方でワークメモリの負荷に関しては、ソフトシンセでは一般的な技術であるストレージからのストリーミング再生を行う事で負荷分散を図れる。(GarageBand for iOS起動直後に曲を再生すると、ストリーミングが追いつかず音色のアタック部分だけが再生される)。
通常のソフトシンセはHDD等のストレージメディアからストリーミングを行うためそちらの負荷がかなり高いが、基本フラッシュストレージのiOSにおいてはストリーミングによるリード負荷はそこまで高くない。
GarageBand for iOSはこう言った事を行う事で、決して能力が高いとは言えないモバイルプロセサでのDTM環境を実現しているわけだ。

◎この「プロセサの制約を波形容量で解決する」手法は、GarageBand for iOSに限らずソフトシンセでは一般的に使用されている。ハードシンセのように高速な読み出しメモリや発音処理専用のプロセサを持てず、ワークメモリの容量制限と限られたプロセサリソースを有効に活用するために、ハードシンセ程制約がないストレージを活用して発音処理にかかる処理を引き下げている。
別の言い方をすれば、ハードシンセが音声処理で表現している部分を、ソフトシンセでは波形容量で表現しているのだ。
一般的なソフトシンセではこの波形容量による音色の切替は「演奏時の不自然さ」として現れやすいのだが、もともと高度な演奏を要求出来ないGarageband for iOSが(多少ストレージを食う事になっても)この仕様としたのはプロセサ処理の効率利用という意味では非常に合理的な設計思想だと思う。

2013/04/16

【Music Works】Garageband for iOS

◎先日通勤途中にふっと音楽のネタが思いつき、随分前にダウンロードしていながらあまり使っていなかったGarageband for IOSでネタを作り込み始めた所、意外にハマり込んでしまい、気がついたら曲の骨格が出来上がってしまっていた。



曲の善し悪しというより、このレベルの音楽がスマートフォンで作れてしまうという事に隔世の感を覚える。
(まあ、元々はGarageband for iPadでiPad専用アプリケーションだったのだが…)

◎作りかたはそう難しくない。メロディを適当にピアノで打ち込んだ後、コード決め(そのまま白玉になっている)をエレピで行い、他のパートをSmartInstrumentsでコードをなぞって行っただけだ。
Garagebandで一番面倒なのがドラムの打ち込みだが、これはドラム画面で指二本タップ(一定のリズムでタイコを叩き続ける)で使用する楽器をドカドカと打ち込んだ後、ピアノロール画面で不要な音の消去/ベロシティ調整をやる。パーカッションはSmartDrumを使用。
頭と途中に入って来る民族楽器風のフレーズのみ、Mac版GaragebandのApple Loops(cafファイル)を読み込んだものだ。
今回は内臓音源とApple Loopsのみ使用したが、本来Garagebandは簡易的なDAWである。であるからして、手持ちのギターをオーディオインターフェース経由で録音したり、鼻歌を直接Garagebandに録音して、オケを作り込んでいくことで作曲する事も可能だ。

◎しかしまあ冷静になって考えてみれば、十数年前の音楽制作環境と言えば大掛かりなPCで外部音源を鳴らし、不安定なシステムと格闘しながら録音したりして作ったものだった。あの頃の環境が、スマートフォンの中に収まる。しかも内臓音源のクオリティは、当時の外部音源のそれより遥かに高く、そのインターフェースは当時のそれよりも遥かに直感的・音楽的だ。

◎また、この音楽製作は、「iOSでなければ」出来ない事だ。AndroidやWindows(Windows8におけるmodern UI含む)は、あろうことかMIDIを「レガシーなもの」として切り捨てた。しかし、コンピュータ・ミュージックとMIDIは不可分なものであるし、MIDI自体がレガシーであっても、その実装次第ではここまでクールなアプリケーションを作る事が出来るのだ。

◎仕事だなんだでなかなかゆっくり音楽を作る時間も気力も取れないが、これなら手持ちのスマートフォンで、電車の中や、ベッドで寝転がって音楽が作れる。これも時代の、テクノロジーの進化である。

2013/04/09

【Traffic】湘南新宿ラインと東北縦貫線

◎仕事で栃木県某所に出張する事になり、前からちょくちょく終業後新宿池袋方面に抜ける為に利用していた湘南新宿ライン(宇都宮系統)に長距離乗車することになった。 神奈川県から宇都宮の近所まで、片道2時間(快速だった)。 帰りは直帰で池袋まで2時間(鈍行だった)。 あまり宇都宮とか高崎とか縁のない場所だったので距離感がイマイチ判っていなかったが、いざ乗って判った。遠いね、栃木県w

◎あまり良くわかっていなかった頃は「要は東北線と埼京線繋いで連絡運転してるだけだろ?」と思ったが、池袋抜けると大宮までほとんど専用線(貨物線)なのねw 特に池袋から赤羽までノンストップ、墜落インバータを響かせながらの激走は笑ったw 移り変わって行く沿線風景や、大宮を過ぎた途端に一気に地方の電車の雰囲気になる車内など、2時間乗りっ放しでも全然退屈しなかった。
もともと15両もズラズラ繋いで田園風景を突っ走る姿がいかにも「列車」って感じで趣があって、割りと嫌いじゃないなこの雰囲気。セミクロ車に乗って行くと更に列車度感満点。18キッパーが鈍行で旅をしたがる気持ちがちょっとだけ判ったw

◎この湘南新宿ライン、宇都宮・高崎系統でそれぞれ日中6往復している列車のうちの2本が割り当てられている。ラッシュ時間帯は勿論本数はもっと多いが割合的にはこんなもんだ。 宇都宮線高崎線夫々で見ると30分に1本しかないので、もっと増発出来ない物かと思うが、線路容量や乗り入れ路線との兼ね合いでこれが精一杯なのだろう。(埼京線の合間を走ったり、蛇窪信号所で横須賀線と平面交差したり…)

◎さて、話題は少しズレるが、現在「東北縦貫線」の工事が進められている。これは東京駅〜上野駅間の分断路線を再接続して、宇都宮・高崎線と東海道線を接続しようと言うものだ。これが完成すると、湘南新宿ラインのみならず上野発着系統も横浜方面への直通が可能になる…のは良いのだが、湘南新宿ラインと違って大半が既存の列車線を使うので、現在ある列車の大幅な改変…東海道・宇都宮・高崎各線の大幅なダイヤ改正が行われる事になるだろう。JRから詳細の発表は(当然ながら)まだ無いが、どのようになるのかは非常に興味深い所である。

◎これについて興味深いページを見つけた。
中央大学の鉄道研究会が東北縦貫線開通時のダイヤについて考察しているのだ。
http://chuo4409rfc.web.fc2.com/katsudou/kenkyu06_jyukansen.html

東京駅基準で見ると、

・00分、30分に特急始発
・普通列車はx3分発のパターンダイヤで6本/分
03分発、23分発、33分発が宇都宮系統、13分発、43分発、53分発が高崎系統
・1時間に2本、品川止まりが入り込む
…となっている。
一見、湘南新宿を経由しない列車は全て品川に直通するように見えるが、これを大宮基準で見ると、大宮発の上野方面列車は10本ある。
東京に乗り入れるのは品川折り返し含めて8本。2本はどこに行った?
…実はこの2本、現状のダイヤには存在しない2本(現状ダイヤで大宮発昼過ぎの宇都宮線/高崎線列車は各4本の計8本)な上、この2本、
なんと赤羽折り返しになっている。赤羽着12:57と13:27。そして何故か、「上野折り返しが存在しない」。なんだこりゃ?
この2本、どうやらこのまま上野まで走らせると上野着が13:07/13:37となり、常磐線特急の乗り入れの支障になると判断されたようだ。
しかし、平日昼間に2本増発する意味も、それを赤羽で止める理由も判らない。上野まで直通させても、地平ホームに入れてしまえば問題ないではないか。

◎これをベースで考えるなら、個人的にはトータルの本数は変えずに
・東京での接続列車は毎時4本(宇都宮2本、高崎2本)とし、残りの4本は上野で折り返す
・東海道線の毎時6本中、2本は東京折り返しを残す
・上野折り返しになって空いたスジを使って、常磐線の特急毎時2本及び普通列車毎時2本を品川折り返しor
東京終着・品川回送折り返しにする
が妥当な所ではないかと思っている。理由は
・湘南新宿とセットで考えた時に、高崎系統の直通先の偏りを無くして平均化
・長年培われている東京始発/上野始発乗客にとっての利便性(着座機会)の大幅な低下の防止
・常磐線快速直通機会の増大と乗り換え利便性の拡大
・上野(高崎/宇都宮線)及び品川(常磐線)折り返し設備の有効活用
といった所だ。
さらに反対方面で考えた場合も、宇都宮方面2本/高崎方面2本/常磐方面2本+特急、と、直通先が平均的に分散化される。

◎そして何よりも、定時パターンダイヤとはなっていない宇都宮・高崎・常磐線の各路線のパターンダイヤ化が必須になる。と言うか、湘南新宿ライン含めて複雑な乗り入れ関係を持つ以上、高崎線・宇都宮線のほぼ白紙大幅ダイヤ改正は避けられまい。
しかし上記の案で行けば、大宮からの南行は宇都宮・高崎夫々で「東京方面2本、上野止まり2本、池袋方面2本」で、10分間隔(かつ直通先は30分間隔)のパターンダイヤに出来得る。
横浜からの北行も「東京止まり1本、東京経由直通2本、池袋経由直通2本」×2のパターンダイヤに出来る。上記の「理由」にパターン化による直通先の判りやすさという側面も出来て来ると思うのだがどうだろうか…

◎などと、妄想がどんどん膨らむのであったw
(最初は埼京線の優等列車を全廃して宇都宮か高崎どちらかの湘南新宿ラインを埼京線経由にして全体を増発したらどうか、とかまで考えたw)

2013/04/01

【Diary】15年目の桜

◎今日から新年度…といっても私の職場は12月決算な上、あんまり決算とか年度末とか意識するタイプの仕事ではないのだが、ともあれ新年度。街には真新しいスーツに身を包んだ新社会人が行き交う季節になった。 というか、「真新しいスーツに身を包んだ新社会人」を見たのが何年振りだろうかw 茨城生活じゃ全然そんなの見なかったもんなーw

◎帰宅途中にスーパーに寄ると、新社会人とおぼしき女子集団が一生懸命調味料や普段使い野菜を買いあさっていた。今日から親元離れて一人暮らしか大変だなー…なんて微笑ましく眺めていたが、よく見ると野菜や調味料といったものを物凄く慎重に品定めしている。中には目をひんむいている子もいる。ああ、そうか、地方から出てきて、物価の高さに驚いてるのかw
私は茨城生活の頃からここのスーパーで買い物してたから程度は知ってるが、確かに都心外から比べるとここの物価はおしなべて高い。とはいえ歩いて5分もかからない所にもう1軒スーパーがあって、そっちは安いから、お金のない間はそっちで買い物した方が良いよ〜w 成城石井程じゃないけどここもそこそこセレブな人が買い物に来るとこだからw がんばれw

◎しかし思い返してみれば私も東京に出てきてもう15年になる。 単身パック一人分とシンセサイザーだけ持って、最初に入ったのは昭島の、六畳一間の独身寮。初日だけ布団引いて寝たら案の定体が痛くなって翌日早速粗大ゴミからパイプベッドを拾ってきた(つい2週間前まで使っていた!)とか、立川で自転車買って漕いで帰ってきたとか、まず最初に買った家具がテレビ台とカラーボックスだったとか、生まれて初めて携帯買って1週間で落っことして生まれて初めて親に借金したとか…いろいろ懐かしいなぁ。
あの六畳間には半年しか居なかったけど、間違いなく今の自分の基礎はあの六畳間にある。今、このBlogを打つとなりの部屋は丁度あの時と同じ畳敷きの六畳間。こんな所に生活に必要な荷物全部詰め込んで、トッ散らかった部屋で一人過ごしていたんだな…と、ふと懐かしくなる。

◎今年はもう散り始めているが今年も桜が奇麗に咲いた。実は私にとってこの桜の季節は、「一番苦手」な季節でもある。「春憂い」という言葉(俳句の季語だったか)があるが、かつて心療内科にかかって抗鬱剤治療を始めたのがこの時期、それ以来、どうにも春先の時期は気分が不安定になる。
それと、思い返せば心療内科受診も含め、自分の人生の様々な転機はいつも春先で、いつも「腹立つ位に桜が奇麗に」咲いていた。たとえそれが嬉しい変化でも悲しい変化でも、いつもそれは桜の時期で、毎年変わらず美しく桜の花が、かえって諸行無常というか、「世は並べて事も無し」というか、そんな「ヒトがヒトとして生きる馬鹿馬鹿しさ」を教えられているようで、なんとも言えない気分になる。 桜が散ってしまうと、いつもの「頭の悪い私」に戻るのだが…

◎まあ今年に関して言えば年が開けたらいきなり住まいも仕事も新生活、そのどちらもに振り回されて「躁状態か」というような3ヶ月を過ごしてきたのだから、ふっと気が抜けて憂鬱になったりするのも、まあ仕方が無いかな、と。
最近やっと仕事も暮らしも落ち着いて、土日はヒマを持て余す程度にはなってきたので、またボチボチと東京暮らしを充実させて行きたいものである。
15年前に胸に抱いた「これからの期待」に背かないように。

2013/03/21

【Diary】9年越しのTokyo Diary

◎超絶久しぶりのDiary更新。 最早生存記録はTwitterに移ったが、一つのけじめとしてこれだけは書き残しておこうと思った。

◎今年の頭に念願の東京移住が叶い、足掛け9年の茨城生活に終止符を打った。1月に引越を済ませ、2月に部屋を改装、3月に改装した部屋にベッドルームを移し、やっと「東京生活」の地場が固まってきた。
いやあ、嬉しい。不本意な理由で東京・三鷹から離れて9年間、どうやって東京に帰るか、その事ばかりを考えていたので、念願がやっと叶ったのだ。その間に、失った物も多いけれど…

◎気に入っていた三鷹の街を離れたのは2003/12/14。あの日の事、正確にはあの日の前日の事は今でも忘れない。首都高を走りながら見上げた新宿の高層ビル。あれを見たとき、私はどんな事をしてでもこの街に帰って来ると自分に約束したのだった。 20代も前半の、拙い誓いだったが、少なくとも私は本気だった。
あれから9年。八畳一間のワンルームから持ち出した荷物は大半が入れ替わり、当時と同じものは衣装ケースひとつと布団と薬缶、あとはいくつかの洋服だけ。
たくさんの物を捨てては入れ替え、気がつけば一つの世帯として恥ずかしくないレベルになっていた。
あの頃からは仕事も、生き方も、価値観も変わったし、出会いも別れも経験した。9年前と同じようなノリで日記はもう書けない。私も年を食った。
それでも、自分に課した約束だけは、何とか守る事が出来た。これは私の一つの自慢である。

◎東京に戻ってきて思う事は、茨城には無かった「多種多様な選択肢に満ちていること」「日々の変化や刺激を楽しめる事」が、自分にとって大きな「癒し」であることだ。 人によっては自然の移ろいや静かな環境が癒しになるのかもしれない。 閑静な住宅地を好む人も居るだろう。 しかし私は、猥雑で喧噪な「街」に自分を置く事が、何よりも癒しになる。(だからこそ中国出張時も、連日香港の街に逃げ込んでいた)
茨城生活で何にストレスを感じて居たかを書き出すと超長文になるので別エントリにするが、とにかく今は「都会の時間に自分を置く事」により、今まで感じた事が無い位ストレスフリーな日々を送っている。

◎この歳になってまで「何か、良いことが起こるかもしれない」なんてな淡い期待を持てる程もう私も若くないが、ともあれ手にした「東京都民」としての自分、これを精一杯楽しんで行こうと思う。
単身パック一つと胸一杯の希望を持って四国から出てきた、あの時のように。

2013/03/07

【Sound Works】Logicの入力お作法 Ver9版

◎私がDAWにLogicを選んでいる理由は、「高機能DAWで唯一タイ入力に対応している」というもので、その操作性についてこのエントリで以前紹介したところ、Google検索で「タイ入力」で検索するとかなり上の方にヒットするぐらいには皆様にご愛顧いただいているようである。
ただ、このエントリの情報、Ver7での情報であり、現行バージョンであるVer9では通用しない部分が多い。そこで超久しぶりの更新ネタとして、Ver9でのタイ入力お作法について紹介したい。

◎前エントリとLogic9の最大の変更点は、(おそらくは…※1)Logic8で導入されたシングルウィンドウUIの影響で、Ver7まであった「MIDI Inアクティブ時の専用キーコマンド」が使用出来なくなった事だ。このため、Ver9ではステップ・インプット・キーボードの各機能を手動でキーコマンドに割り当てる必要が有る。嬉しい事に、ステップ・インプット・キーボードに割り当てたキーコマンドは、MIDI Inアクティブにしないと作用しないので、他のキーコマンドと重複していても問題ない。
具体的には、MIDI INがアクティブでない場合、重複している機能が動作する。逆にMIDI Inがアクティブだと、重複機能は動作せずステップ・インプット・キーボードの割当が優先される。昔のバージョンはこういった重複があると挙動が怪しくなったものだが、Ver9では特にそのような問題は起こらない。

◎では具体的にどのようなキーコマンド割当が良いか、勿論人によって最適系は違うが、一例として私の割当はこうしている。



1〜0の各キーをディビジョンの切替と付点指定、
左右カーソルをトランスポートの移動、
Shift+deleteを削除(トランスポートが戻る)
スペースキーがサスティン入力、となる。
まあ要はCapsキーボードのディビジョン周りとサスティンのキーをそのまま移設したものだ。
あと、MIDI Inのアクティブ切替をOption+Iに割り当てている。

◎この割当にした理由は3つほどある。 一つは先述のCaps Lockキーボードとの操作共通化、一つはかつて私が使っていたMusicatorとの操作共通化(Musicatorもディビジョン…分解能の切替はテンキーだった)そしてもう一つはS90XSとの連携だ。
S90XSのDAW Remoteモードでは1〜10の各キーとカーソルキーが、そのままPCの1〜0キー及びカーソルキーとして機能する。このため、この設定だとディビジョン変更、トランスポートの移動、サスティン入力がS90XS側から行えるのだ。(サスティンはペダルを踏む) ロータリーエンコーダでのトランスポートバー移動や再生/頭出し等のトランスポート操作含め、MIDI入力に関する殆どの操作をMac側に触れる事無く操作出来る。

◎入力操作中にMacに触れなくて良いメリットとして、「PCキーボードがMIDIキーボードの右側にあっても操作に支障が出ない」というのがある。 従来の「音符入力以外の操作はPCから」だと、PCキーボードがMIDIキーボードの左側に無いと作業効率が悪い。(右手で鍵盤を弾きつつ左手でPC操作) が、PCに触る必要がないなら右側に合っても全然問題ない。

◎さて実際の入力方法だが、使用するキーがVer7時代と違うこと以外は変わらない。
入力したいMIDIリージョンを選択(あるいは空のMIDIリージョンを作成)

ダブルクリックしてピアノロールを呼び出し

Opt+IでMIDI Inをアクティブに

テンキーorS90XSの1〜10キーでディビジョン選択(手っ取り早いのは16分音符。この割当だと「5」

鍵盤を弾いてノート入力。 音を延ばしたい場合は鍵盤を押さえたままサスティンペダルを踏むorスペースキーを押す。休符の入力は鍵盤を離した状態でサスティンペダルorスペース。

といった流れ。
タイ入力の利点はその入力速度の速さと直感性。
例えば「かえるのうた」を入力する時、タイ入力非対応DAWでの入力は
四分音符選択→ど→れ→み→ふぁ→み→れ→二分音符選択→ど→四分音符選択→み→ふぁ…
となるが、タイ入力の場合、
ディビジョンを四分音符に設定→ど→れ→み→ふぁ→み→れ→ど→サスティン→み→ふぁ…
となる。 音符の入力とサスティンの入力をリズムに乗って行うと、擬似的なリアルタイム入力のようになり、ものすごく直感的な入力が出来る。
Logicのステップ入力は、勿論マウスでの入力も出来るが、ステップ・インプット・キーボードにしろCapsLockキーボードにしろ、タイ入力が前提の設計になっている。これを使わない手は無いだろう。

※1:実は私Ver8の導入実績が無いのでVer8の時どうだったかは判らない。