【Sound Works】88鍵ステージキーボードを弾き比べてみる
◎某ライブに参加した先週の週末、秋葉原からほど近い都内某所に泊まった私は、どうせ都内に居るのだから、とヒマ潰しに自転車でLaox楽器館に突撃。 お目当ては勿論「いつか買ってやるぞリスト」筆頭のS90XSに触ることだが、シンセフロアはふと見ると88鍵のステージキーボードが並んでいる。 かつての花形「ワークステーションシンセ」はDAWの高機能に押されて鳴りを潜め、いつの間にか「弾く事」を主体としたキーボードが増えて来ている訳だ。 これは「鍵盤楽器が欲しい」と思っている私にとっては望ましいムーブメントである。
◎しかし数ある演奏主体のキーボード、はたしてベストバイはどれなのか? 本当にS90XSは「良いもの」なのか、それを見極めるべく弾き比べてみる事にした。
今回弾き比べの対象となったのは以下。 NordElectro以外は全て88鍵,かつワークステーションでないものを選んだ.
・YAMAHA S90XS
・YAMAHA CP300
・Roland RD-700GX
・KORG SV-1 88鍵モデル
・Clavia NordStageEX 88
・Clavia NordElectro3 73
…あとはリファレンスとしてMOTIF XS8を弾き比べてみたのだが,音源を無視して絶対的なタッチだけで考えると,実はMOTIF XSが一番いいという結論になってしまったw ソフトウェア音源のマスターキーボードとして使うんならこれが最良だとは思う。ただ音源とセットでの弾き心地・楽しさで言うとS90XSとNordStage88がトップで,全然性格が違うのだがこの二つは甲乙つけがたい。
これらのモデルはいずれも「ピアノとエレピの中間」といったタッチで,どんな音色にもマッチしえるバランスの良さを思っている。が,面白いのはS90XSは「ピアノの鍵盤を軽くした」,NordStageは「エレピの鍵盤を重くした」,といった印象で,目指すものが同じだがアプローチが真逆なのだ。 なのでここはもう「ピアノの鍵盤がいいか」「エレピの鍵盤がいいか」という好みの問題になる。 軽いピアノ鍵盤でエレピを弾いても面白いし、重いエレピ鍵盤でピアノを弾くのも面白い。
◎SV-1もこの「ピアノとエレピの中間」といった風情ではあるがやや軽めで,打鍵時の感覚にKX8のGHS鍵盤みたいな安っぽさを感じてしまう,「中庸」と言うよりは「中途半端」といったコトバのほうが合いそうな,そんな雰囲気。 とはいえ決して悪い・弾きにくい鍵盤ではないし,楽器そのものが扱いやすく,これはこれで弾いててそこそこ楽しい.
一方で,これらの「それぞれのモトとなっている楽器」に忠実に作ろうとしたのがCP300とNordElectro。 言うまでも無くCPがピアノ,NordElectroがエレピだ。 どちらも「その音色」を弾くのであればタッチや音色とのマッチングはS90XS・NordStage以上なのだが, CPでエレピを弾いたり,NordElectroでピアノを弾いたりするとギクシャクしてしまう。
またCPに限って言うと,意図的にそう設計されているとはいえスピーカの振動が鍵盤に伝わってくるのはちょっといただけない。
◎一方で最悪だったのがRD-700GX. 世間でなんであんなに評判がいい(S90XSの評判が悪いので相対的なもの?)のかさっぱり理解できない。打鍵し始めのタッチは特別軽いわけではないがそこからいきなり鍵盤がカクンと高速で落ち込んで底突きし,離鍵時の戻りも速く,カックンカックン動く鍵盤だ。 一言で表現すれば「ハンマーのついたシンセ鍵盤」といった風情。こんな独特すぎるタッチの為,兎に角弾きにくい。振り出しが重量あるのに底突きが速いので,突き指しそうだ。
また,この店頭展示品のRDと,その隣にあったV-Pianoまでもが鍵盤が変色し、表面が傷だらけになっている程耐久性が低いのも気になった。 苛酷な環境にあるとはいえ,同じ店頭展示品の餅XS(これも何だかんだ言って2年近い)や, 夏頃まで置いてあったS90ESは全然そんな事ないのにRolandの2台だけがボンボロボンになってしまっている。 ウチのMOTIF8など,8年経っても綺麗なもんだ.こんな姿見せられたら,ほしい人でも買う気が失せるんじゃない?
◎…と言うわけで,まあ価格帯等を考えても順当っちゃ順当な結果ではあったが,唯一ガックリ来たのがRD。いやまあ,ガノタ御用達デザインな時点で候補の「こ」の字も無かったが,コレでS90XSと実売価格が1万しか変わらないってのは…RDが高いのか,S90XSが安いのか…
3 件のコメント:
同じお店でこの春先に同じ機種を弾きたおしてきたものです。的確な分析、おみそれいたしました。各機種への感想もほとんど同じです。
ただV-Pianoの鍵盤の汚れについては、あれは汚れではなく、象牙鍵盤を模した「デザイン」なのだと思います。触った感触がひんやりしているのも上手い演出だと私は思いました。
ピアノであれエレピであれ、生楽器(あえてエレピも生と言いますが)の場合鍵盤のタッチと発音する音は不可分であり一体ですから、必然的に弾き手がタッチと音色をワンセットで記憶しますが、シンセはひとつのタッチでピアノでもオルガンでもストリングスでも弾かなければならないので、やはり中庸なものになっていくのでしょう。その意味でS90XSの落とし所はうまいと思います。クルマで言えばトヨタ。
ありがとうございます。 でも倒しちゃダメですよ…
…って!! リンク先見てびっくり。 それこそ私がS90XS導入の際、Blogを参考にさせて頂きました。 ありがとうございます。
音源と鍵盤の一体感…勿論生楽器もそうですが、シンセサイザーにおいてもやっぱり重要ですよね。
その点において今の所私は満足のいくソフトシンセに出会ってなくて、恐らくiVoryとかでも満足は出来ないんだろうなぁと思ってます。
(それ以前に、ソフトシンセの音はどうも音の間の「つながり」が良くない感じはしてますが)
ここばっかりは鍵盤の特性に合わせた音色チューニングが出来るハードシンセに分があるかな、と。
V-Pianoが象牙の感触…まあ、年季の入った象牙鍵盤は確かにあんな感じですね。とはいえ同じ「象牙調」を詠ったYAMAHAのNW鍵盤と比べると、「なんか違うだろう」って感じはしますが。
それにやっぱりあのカクカク鍵盤が…w
な、なんと、お役に立ったのか散財の後押しをしてしまったのか(笑)。
私も欲しい欲しいと常に口にはしていても、導入に積極的になれないソフトウェア音源。出費のことを差し引けば、やはり「弾き心地」なんて評価軸とは無縁ということが大きいと思えます。私の場合ソフトウェアシンセどころかKX88とラック音源の組み合わせでも場合によっては「発音遅い!」と感じることすらあるので、常にバッファかまして鳴らしているソフトウェア音源はまず「楽器」ですらない、という感じです。
超便利ですけど(笑)。
そんなわけでやっぱり鍵盤と音源がひとつにパッケージされたヤツじゃないと!と思って導入したのがS90XSなわけです。今のところ鍵盤のタッチと発音スピードについては満足してます。あとR社の鍵盤はあれは「スイッチ」なんで(笑)。それこそRD-1000の頃からの伝統のカクカク具合。さすが技術のR社。
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