2007/07/01

【Sound Works】前後の定位

◎たまには音響関係の話題でもやるか… というかLogic弄ってて久しぶりに思い出したネタだけども。
Mixをやっていて一番頭を悩ませる「定位」、まぁ左右定位はパンで簡単に出せるけれども前後定位の演出は結構難しい。 パッと思いつく所ではフェーダに依る音量の調節だが、これだけだと音量の差は出るが定位感は出ない。

◎ではどうすればいいか? 理屈を述べても良いのだが書くのが面倒なので簡単に言ってしまおう。
音源の距離が離れると直接音成分が減り、初期反射音(ER)成分が増す(=音像がボケる)ので、これをコンプを使って表現するのだ。
アタック最速、リリース長めでアタック成分を潰し、スレッショルドを深くして行くと残響成分が持ち上がって「遠くで鳴っている感じ」が演出出来る。 ソースの残響成分が足りないなら、ERをかけて、Dry?WetをWet寄りにしてやれば良い。

◎合わせて、EQをハイ落ちにセッティングする。 音の距離減衰は高域程大きく減衰するので、それを表現するのだ。 また100Hzを下回る様な超低域も距離減衰がある(→このへんの帯域は空気より物質伝導のほうが大きいため)ので、極端に遠くするならローも少し落として、ラジオボイス気味にしてやると良い。

◎ポイントとなるのはこれらをセットで行う事。 EQだけでもコンプだけでも距離感は出ず,これらをセットで行って初めて距離感が出てくる。 また勘違いし易いのだが「リバーブを深くかけるだけでは音像は遠くならない」と言う点だ。 殆どの場合残響の広がりが大きくなるだけで,リバーブタイムやセンド量を調整しても音像は遠くならない。
重要なのは「直接音と反射音の比率」なので、リバーブを使って距離感を出す場合はフェーダを絞り、センドを多く送る(場合によってはプリフェーダで、直接音より多くリバーブに送ってやる)ことで、反響音の比率を増してやろう。

◎また、私がよくやる方法で「ソースとの距離を計算して、その分サンプルディレイをかけてタイミングをずらす」と言うのもある。
音は常温常圧では340m/secの速度で空気中を伝わる。 つまり音源が1mずれると、2.94msecのズレが生じる。 これを利用するのだ。
最前列にいる音源(ヴォーカルとか)を0msecとして、遠い音源にサンプルディレイをかけて発音を遅らせると、「距離に依る発音遅れ」を表現出来る。
ちなみにこの「1m=2.94msec」は、リバーブやEQのプリディレイ計算にも使えるので、覚えておくと便利。

◎まとめると

近い  ←  距離  →  遠い
ドンシャリ  EQ     ハイ落ち(更に遠ければローも落とす)
強い    アタック    弱い
速い    リリース    遅い
大きい    音量     小さい
少ない   ER成分    多い
殆ど無い   ディレイ  大きい 
といった所。 勿論これは「方向性」の話で、こうすれば前奥定位が出る!というものではない。(まして具体的な数値ではね…)
何処をどうすれば良いと言うのはイロイロ弄くり回してみるのと、「前奥定位がちゃんとしている」CDをいろいろ聞きあさって見る事だ。 最近自分が聞いた中ではBlueNote。 大昔の録音とは思えない定位感で、なおかつこれはモノミックス…つまり左右の定位は無い。
楽器もそれほど「想像がつかないもの」は無いので、例えばピアノが本来どういう音で,それがBluenoteでどういう音になっているかをじっくり分析すれば、自ずと答えが見えてくると思う。

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