2006/11/19

【Column】年賀状の季節なので

◎インクジェットプリンタのお話を。
私は職業プリンタ屋(最近まで、インクジェットからは離れていたが)なので、プリンタの購入相談をよく受ける。 (中にはSOHOやってる人からLBPの購入相談を受けたことも…)
確かに年賀状シーズンになると毎年インクジェットプリンタが売れる。逆に年賀状ぐらいしか使い道が無いだろうという感じもするが、その年賀状のためにメーカーは毎年毎年新技術を投入して、量販店には様々なモデルが並び、消費者はヘンに混乱しているのではないかと思う。

◎モデルを大まかに分類すれば4色~5色の生産性重視モデル、6色以上の画質重視モデルの二つに分類できる。
この二つ、実はプリンタハードウェアとしての差はほとんど無い。 解像度も同等だし、内部の機構はまったく同一で、インクカートリッジの配置とプリントヘッドの使い方で性能を振り分け、使い方に適応させている。 このため、画質重視モデルの「写真」を印刷しない限り、画質の差はほとんど出ないのだ。

◎画質重視モデルが生産性重視モデルに画質で勝るのは、主にシャドウ部の色空間の広さだ。
もともと画質重視モデルの補色(ライトシアン、ライトマゼンタ)はハイライト部の粒状感低減の為に追加されたものだったが、プリンタの物理解像度が上がるにつれて、今度は高彩度部の色空間の問題が出てきた。
プリンタの物理解像度を上げるとシャドウを埋めるための打ち込み量が増えるが、用紙がそれに耐え切れなくなってきたのだ。 これを補うためにCMYKの2次色を最初から補色として用意して、シャドウの打ち込み量を下げ、下がった分を色空間の拡充に使うようになった、というわけだ。

◎とはいえ粒状感は解像度の向上でそれほど問題にならなくなっているし、中間調の色再現性は画質モデルも生産性モデルも同等だ。 差が出るのはあくまで超ハイライトや超シャドウ部で、少なくとも「子供が生まれますた」の赤ん坊の顔や「結婚しますた」のウェディングドレス程度でほとんど差は出ない。 ましてラティテュードの狭いコンパクトデジカメで撮った写真なんぞ…まぁ差は出ない。
一方で生産性、これは大きな差が出る。 画質を犠牲にして双方向印字を重視する分、スピードが段違いなのだ。
この分野はキヤノンが特に力を入れていて、ヘッドのミラー配置(7色用ヘッドの両サイドにシアン、マゼンタを配置)で双方向印字時の色順変動を無くしたり、顔料黒のノズルを増やしたり、と様々なチューニングを行っている。
それでいて本体価格やランニングコストは画質モデルより低い。 一般用途なら、なかなかお買い得なモデルと言うわけだ。

◎さてそんなプリンタを買ってきたはいいが、年賀状シーズンになってほこりをかぶったプリンタを稼動させてみると…「ノズルが詰まってるぅ~!!」なんて話をしょっちゅう聞く。 エプソンはヘッドの着脱が出来ないので修理送りになるし、キヤノンもヘッドは外せるが単体売りしてないのでヘッドの入手に苦労する。 実はこれ、簡単なことでこういった悲劇を防止できるのだ。それは、
・電源を切らない
・定期的にインク残量をチェック
・なくなったインクはちゃんと交換(他の色が切れるまで放置しない)
・社外品インクは使わない
…といったところだ。

◎プリントヘッドがいかれる原因の大半は乾燥による固着で、これを防ぐためにスリープ状態でもこっそり吐出やこっそりクリーニングなどを定期的に行っている。 しかし電源が切られてはどうすることもできない。
また当然こっそりクリーニングでインクを消費するが、インクタンクが空になるとヘッドに空気が混入する(インクタンクは、大気連通用の穴が開いている。 それがないと吸引できないからね)ので、常にインクを満たしておく必要がある。
ちなみにこのこっそりモードでのインクの減りだが、満タンインクタンクでだいたい半年ぐらいは保つはずだ。
そして社外品インクだが、これはもってのほかだ。 インクなんて化学薬品なので、種々の試験を経て調合されたインクで無い限り、ハードにどんな影響を及ぼすか判らない。
この場合、どこのプリンタメーカーも修理を受け付けてくれないか、法外な修理費を取られることになる。 目先の消耗品代に囚われて「買いなおしたほうが安い」ほどの出費を迫られるよりも、少々高くても純正品買いましょうや。

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