2006/11/11

【Diary】初期ロット品に手を出す愚

◎PS3が発売になり、東京都内の家電品店では行列が出来たそうな。
製造業で、開発や生産に関わる立場の人間からすると、どういう神経を持って初ロット品を買いに行くのかが全く理解できない… わざわざ自分から不良品を購入しにいくようなものなのに。

◎何故初期ロット品に問題があるのか?
新製品の製造工程の立ち上げと言うのは想像以上に問題点が多い。 勿論量産を見据えたトライアル生産と言うのもやりはするが、捨てるための製品を作るわけには行かないし、生産するのにも経費がかかるから、トライアル台数は知れている。
しかし実際数万台、数十万台オーダーでの工程連続稼動となると様々な問題が起こる。

◎特に最近は新製品サイクルが速くなり、開発遅延の影響をモロに受ける生産現場はそれだけで問題の温床になりかねないし、そもそもにおいて開発品質に対するテストそのものが短期日程の中で不十分になりえる。
ソフトウェアなんか顕著で、バグ潰しは「やればやるほど出てくる」ものだが、実際日程が無いので「ある一定の期間の中で出来ること」だけをやってハイ生産開始~ なんてこともよくある。

◎生産の立ち上がり時期はこういった開発起因問題と、部品不良やら組立不良やら治工具・生産設備の不具合やらの生産起因問題がゴッチャゴチャになり、生産現場はまさに大混乱、戦争と化す。私が今年の夏中国に行ったのも、そういう戦争を収束させるためだ。
大体こういう戦争状態が収束するには3ヶ月か、長くて半年程度の期間が必要になる。量産効果を見据えた十分なフィールドテストを経て、初めて安定した工程に繋がるものなのだ。

◎もちろんこれらは基本的に生産する側の問題だから、本来は生産する側が何とかしなければいけない話だが、
「そもそもそんな出荷日程・発売日程を要求した」のが消費者である、と考えれば、
生産品質や店の在庫が安定するまで「買わない」というのも、立派な選択肢ではないかと思うわけだ。
どっちみち、今回のPS3のような雀の涙程度の出荷台数では、そもそも買えやしないのだから。

0 件のコメント: