2007/06/09

【Diary】音楽制作環境に関する雑感

こちらのエントリにて瑞田ガクシさんが自分の音楽制作環境にまつわるお話を書いておられる。私の場合,どうだろうと考えてみた。
LogicExpress7.2導入後の動向としては

・N1R/W5/SD-80…ドナドナ済
・SC-8850…Garagebandに駆逐される形でドナドナ予定
・XV-5050…やはりGaragebandに駆逐される形でドナドナ予定

機材数が一気に減少してスッキリ。 音源は餅とFS1Rしか残らないし、その他も卓とアウトボードのみ。 そしてそれらは音楽制作環境の「Must項目」でなくなり、必要な時だけ使う、少なくともアイデア出しやフレーズ作り込みの時点では環境や場所に左右されないお気楽環境と相成っている。

◎しかしこの「お喜楽音楽環境」にたどり着くまでには、ノートPCの導入を皮切りに様々な紆余曲折を伴ってきた。
まず拡大し過ぎた環境を自分が制御しきれなくなってきたこと。 機材の量が増えれば増える程その環境維持の為に費やすエネルギーは増大して行く。1曲作る為にやらなければならないことが非常に増えてしまい、さりとてそれら全てを一つのコンソール(→PC)から制御する事も出来ない。Musicatorは入力効率の面では大変優れたソフトだったが、編集機能が非常に弱く、また接続されているデバイスの管理は全く行う事が出来ない。(せいぜい音色の呼び出し程度)

◎結果として「音楽を作っている」のか「音楽制作環境の保守をしている」のかが判らなくなってしまい、音楽制作環境に向かったとたんに制作意欲が萎える…と言う状況になってしまっていた。 せっかくノートPCに移行して環境の制約を取り払おうとしたのに、音楽制作をするには必ず環境保守の制約がつきまとう…一言で言えば「面倒くさく」なってしまったのだ。
しかし当時の外部ハードウェアの能力では、悲しいかな「機材を整理してしまうと」必要とするクオリティを保つ事はまだ出来ない状況だった。(Moderatoが何も出来なかったのはこの理由に依る)その一方でDAW…コンピュータベースでの音楽制作(陳腐化した言い回しだなぁ)には最後まで抵抗していた。

◎丁度Inspironを買う買わないの時期…2003年前後?にはもう現在のDAWを構成する概念の大半は作られていたが、それらを実現するための要求リソースは途方も無いものだった。(ハード代、ソフト代、設置スペース、維持コスト、維持保守作業etc…)それでいて許容出来る処理能力はAW4416のそれに劣り、そして何より不安定。
本気で音楽で食っているならともかく、余暇の趣味にそこまで金をかける程私は裕福ではない。
モノは試しと、Logic Audio5.5を導入してみたが、MIDI回りの機能はともかくソフトシンセ数発でオーバーフローを起こす程の要求性能の高さでは使い物にならず、更にきわめて不安定…と言うか、「生活ツールとしてのPC」と「趣味ツールとしてのPC」を兼任させた際に発生する不安定要素を許容しきれるだけの堅牢性を、WindowsXPは持ち合わせていなかった。(そしてそれは、おそらく今も)

◎結局、私が音楽制作から身を引いた2003年後半以後と言うのは、ハードの性能は中途半端、ソフトは要求リソースがバカ高く、さらに悪い事にCPUはIntelPentium4の熱問題に突き当たり、半導体やストレージの値段は高止まりし、シンセメーカ各社はDAWの概念に振り回されて魅力的な(実用的な)製品を出せない…という、いわば「趣味音楽において最悪の時期」だったのではないだろうか。
痛い目を見た事もあり、「20万円以内の投資で、AW4416を凌ぐ程の処理キャパシティと安定性を得られるようになるまで、ソフトDAWは信用しない」という条件付けが私の中で出来上がり、そのまま時間は流れて行った。

◎この状況を打破したのは大きく3つ──AppleのEmagic買収、IntelのCoreアーキテクチャ、「Intel Mac」の登場──の変化だった。
EmagicがAppleに買収された事で、LogicはWindowsというプラットフォームを失いはしたが、OS Xとの親和性を高め、またEmagic単体では生み出されなかったであろう柔軟な概念(AppleLoops、GaragebandInstruments)を得る事になった。
Coreアーキテクチャは特にノートPCで問題となった「処理能力と消費電力と熱」の問題を一気に解決し、結果としてノートPCの「価格性能比」を一気に向上させた。
そしてIntel Macはwindows環境との親和性を高め、「Logicの為にプラットフォームを移動する」ことへの敷居を低くした。 (まぁ、私の場合結果的にWindows環境は構築しないまま、全面的に移行したが)

◎かくしてMacBook+OS X+Logicという環境が、私自身が「音楽制作環境に求めたもの」──環境や場所に左右されず、また保守を必要としないこと、それでいて必要充分なクオリティを確保出来て、かつ信頼に足る安定性を持つ事──を実現するに至った。
似た様なコンセプトはかつての「Studio Moderato」で試したが、あの時は時代が速過ぎた、ということだろう。
将来的な願望を書くと、MOTIF ES/XSに代表される「外部音源、コントローラ、オーディオI/F」の統合が出来れば,卓すら無くしてPCとシンセ1台、あとはモニターのみという環境にしたい。 いやむしろ「オーディオI/O統合型88鍵MIDIコントローラ」が出れば,音源すら必要ない。 何せ「絶対に無くせない」のはFS1RとM|One、モニタースピーカ、ぐらいなのだから。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

>◎結果として「音楽を作っている」のか「音楽制作環境の保守をしている」のかが判らなくなってしまい、音楽制作環境に向かったとたんに制作意欲が萎える…と言う状況になってしまっていた。
激しく同意。
自分も抱えていたジレンマで、今思い返せば結局オペレータなのか音師なのか自分でもワケがわからなくなってたような気がします。
一方でDAW不信てのも確かにあって、結局PCを二台に分けざるを得なかったわけで、その点ではCoreAudioの概念ってのは(ASIOマンセーな職業NUENDO使いとかはレスポンス面が劣るとか馬鹿にするかもしれんが)流石だな兄者と思わざるを得ないかなと。
正直、Amane氏の一連のレポを読んで将来は自分もMACに傾く可能性を感じましたからww
次々世代あたりは、進化がすげーことになってんのかもしれんね…。

>「絶対に無くせない」のはFS1Rと
つhttp://www.midia.co.jp/products/ni/synth_line/fm8/index.html

Unknown さんのコメント...

>DAW嫌い
黎明期のDAWって、PCの構築・管理知識が無ければ到底扱えるもんじゃなかったと思います。
パーツの相性がどうだ,最適なCPUがどうだ…
自作もデスクトップも興味ない私にとって、なんで音楽やるのにパソコンオタクにならなきゃいけないんだ〜、という抵抗感がすっごく強かったですね。
しかもフタ開いてみればAW以下の信頼性,でもトータルコストはAWの倍以上…それじゃ意味ねーだろと。

今から考えると、本文にも書いたけど2003年頃って「最悪の時期」だったと思いますよ。
先進機能に踊らされて、雑誌もニュースも製品もDAWのことばかり、でもいざ入れてみるととても使い物にはならない。 そして「使い物に鳴る環境」は時代遅れのレッテルを貼られる…
どっちに転んでも幸せになれなかった時期だったのではないでしょうか。

>CoreAudio
サンプルアキュレートがどうとか言い出さなければ、オーディオI/F無しでソフトシンセもちゃんと扱えて、普通に演奏可能なレイテンシーを実現してるってのが凄いですね。 つかそれ以外の恩恵が良くわからんw

>FM8
残念ながらFM8では代替にならんのですわ。
使いこなせてるかどうかは別にして、あの変態性は「DX7の延長線」のFM音源では絶対無理。