2010/04/24

【Sound Works】ガチンコ勝負!! EXS24vsS90XSピアノ対決!!

◎珠玉のピアノ音色がウリのS90XS。 しかしその波形容量はたったの140MBにすぎない。 一方で今をトキメクソフトシンセの容量は年々肥大化し、数十GBを超える容量のピアノ音源まで出て来ている。 さも、波形容量でかい=音がいい、とでも言いたげな程に。
実は私はソフトシンセのピアノ…当時はThe Grandの最初だったかな…が出た頃からこの考えに物凄く懐疑的だった。 レイテンシーとかなんとかいう以前の問題で、当時から「全鍵サンンプリング!!」なんて謳ったソフトシンセのピアノの音が㌧でもなくショボかったからだ。(当時はCPUでのプロセッシングという考え方自体に懐疑的で、事実当時のPCの実力では使い物にならなかった)

◎さすがにウチにはそんな大容量サンプルは無いが、それでも私の手持ちのソフトシンセのピアノ容量は500M近い容量がある。 メインがMOTIF8だった頃は流石に時代遅れだったのでLogicのソフトシンセを弾いていたが、S90XSに切り替えて以後全く弾いていない。 どう聞いてもS90XSのほうが上だからだ。
「え、それはお前がハードシンセ信望者だからだろ?」…と思われるかも知れない。 そこでそれを聞いてもらうべく、今回の企画
「ガチンコ対決!! EXS24のピアノvsS90XSのピアノ 出音対決!!」となったわけだ。 ひゅーひゅー。 どんどんぱふぱふ〜。
…風邪っぴきで外でらんなくて退屈でヤケクソになって始めた、とも言うけど。

◎では、ここで比較条件を列挙する。

  • 演奏データ:「最高のピアノ音源スレより」から、MIDIデータ(PianoCompare.mid)を拝借し、冒頭のボリューム127指示のみ削除してLogicで再生。
  • 録音方法:S90XSは一旦AW4416のヘッドアンプを通してA/Dし、デジタルでemi2|6へ送ってLogicへ録音。 ゲイン調整はヘッドアンプ。
    EXS24は直接バウンスで書き出し。 ゲイン調整はEXS24のボリューム+インストゥルメントトラックのフェーダで微調整。
  • 変換方法:Logic内でノーマライズをかけた後、Logicから直接192kbps mp3で書き出し。
…っとこんな感じ。 S/Nの面ではアナログ段での増幅がある分S90XSのほうが不利であることを憶えておいて欲しい。
では聞いてもらおう!!
S90XS:
Natural Grand S6
Full Concert Grand
Concert Grand Piano

EXS24:
Grand Piano(Garageband)
Carnegie Hall(Logic Express)
Yamaha Grand Piano(Logic Express)
Steinway Grand Piano(ProSamples)
ソフトシンセの下3つはコンプ切り、EQそのまま、リバーブをウェット5%とした。

◎まずGarageBandのピアノとLogic Expressのピアノ、これはもう勝負になってない。 ガレバンのピアノなんて、実はS90XSより波形容量が多い(約180MB)にも関わらず完敗である。音色が明る過ぎるし、リリースも長過ぎる。 まあ、これGarageband Instrumentsの初期値の問題なんだけど。 少しいじればかなりイイ線には行くが、どうやったってS90XSのナチュラルさには敵わない。
それ考えるとたった30MBにしてはLogic Expressは健闘していると言える。ただやっぱり明る過ぎるし、厚みが無くて淡白。 そして何よりダイナミクスに乏し過ぎる。EX5以前のYAMAHAシンセのピアノがこんな感じだったなぁ。

◎さてここから本命。S90XSよりはるかに波形容量の多いYamaha Grand Piano(約460MB)は…やっぱり勝負になってない。音自体は悪くないのだが、6秒近辺で急激に音量が変わるのが解るだろうか。 これ実際弾くと解るが、ベロシティでの波形変動が急峻な為イキナリ音が代わり、むちゃくちゃ弾きにくい。 またダンパーレゾナンスを波形切り替えで表現しているため、非常にあざとく、切り替えも不自然だ。
一方こちらも全鍵サンプリングのProSample(約250MB)、こちらはえらくのぺーっとしたダイナミクスの無い音。ただし響きは強くなっている…のだが、これも実際弾くと波形が急激に変わり、かなり弾きにくい。

◎とはいえこのへんはEXS24のセッティング…特にフィルターのキー・ベロシティスケーリングを作り込んでやればそこそこ弾ける代物にはなるが、波形切り替えがベロシティスイッチのみで、フィルタ・EGを1系統で処理しなければならないEXS24では作りこみがどうしても甘くなる。S90XSは8エレメントの強みを生かし、ベロシティスイッチに頼る事無く各波形毎に最適なベロシティレンジ・フィルター・キースケーリングを施してあるため、音のつながりやダイナミクス変化が極めて「自然」なのだ。 ここはいくらMIDIデータを緻密に作り込んでもソフトシンセには到達できない領域だろう。
そして、それ以上に致命的な欠点がこの2つには存在する。

◎18秒〜23秒近傍をよく聞いて欲しい。高周波ノイズがハデに乗っている。 これ、波形に乗っかってるフロアノイズがペダル奏法で幾つも重ねられてフェージングを起こしているのだ。
要はソフトシンセの常套文句「波形ループのない自然な音色」とやらのために微弱なディケイ波形までサンプリングし、アンプEGを使わず波形だけで音量を低下させているためフロアノイズが消えないのだ。
ハードシンセはループ波形のためディケイ部はシンセ自身が音量を下げており、波形に乗っているフロアノイズも下がって行く。そのためどんな安物であってもこんな情けない現象は起こらない。
そもそも波形ループが諸悪のように言われるが、ループ部分というのはもともと波形・倍音変動の少ない箇所で、そこをループさせてもリアリティへの影響度は極めて少ない事をいみじくもS90XSが証明してしまった訳だ。 まさに「木を見て森を見ず」ではないだろうか。

◎と言う訳で今回の対決は音色キャラクターの話に行く以前の問題でS90XSの圧勝、という結果と判断している。まあ流石にivory程になってくると(最高のピアノ音源スレのデモを聞く限り)フェージング現象は無いと思うが…うん? The Grandはちょっとその傾向がある様な…?
まあいずれにしても、「サンプリング」である以上集音時のフロアノイズや音色のバラツキは避けられないし、大事なのはそれをいかに最適な信号処理を行って行けるかと言う事だ。
まあ、ソフトシンセはどうしてもハードシンセ程信号処理に潤沢な処理リソースを使えないので波形容量に走るしか無いのだが…
大事なのは数値でなく出音、と言う事だね。

〜〜〜
ところで、S90XSは比較の為に3つのピアノ音色を乗せた。 3つ目の「Concert Grand Piano」はあまり聞き慣れないが、これも実はS90XSの追加S6波形を元に作られたピアノである。 GMバンクの1番で、他2つと異なりフラットチューニングとなっている。んでまたこれもGMバンクなのに8エレメント構成、ダンパーレゾナンスもしっかり備えられている。この3つを聞き比べるのも面白い。

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