2009/09/17

【Diary】狂気の沙汰

◎先日の衆議院選挙後、胸くそ悪い民主マンセーキャンペーンに嫌気が差して政治系のニュースは一切目にしていなかった(新聞すら読んでいない)のだが、ふと目にしたニュースがあまりにも酷いので取り上げる。

ロイター:海外勢が「亀井発言」嫌気、閣内の影響力は限定的の見方も

亀井静香郵政・金融担当相の発言が金融市場に波紋を広げている。17日の東京株式市場では、中小企業による借入金や個人の住宅ローンなど銀行への返済にモラトリアムを設けるとのコメントが海外勢に嫌気され、金融株が売られた。(中略)
亀井担当相は就任後の記者会見で、中小零細の企業・商店が日本の経済の基になっており「貸しはがしによって黒字倒産がドンドン起きている」のが実態と指摘。個人も住宅ローンの返済で苦労しているとして「3年ぐらいは借入金の返済を猶予する措置をとるべきだと考えている」と語った。
…目が点になった。正気の発言であろうか。 もはやこれ、失言レベルの発言なのだが。
普通、こんな発言を聞けば「日本の金融セクターには不良債権が溢れている」と取られるのが普通である。 アタマ大丈夫か?

◎そもそも亀井の言う「黒字倒産でドンドン」とはどの程度なのか。 ちょっと調べてみると…
ニッカンスポーツ(共同通信):返済猶予制度の導入案に銀行業界から反発
東京商工リサーチによると、資金繰りを理由とする企業の倒産件数は2004年から5年連続で増加。友田信男情報部上席部長は「将来性のある企業に絞るなら、あってもいい制度。ただ債権に政府保証を付けるなど工夫が必要だ。財源は、中小企業の資金繰り支援策の緊急保証制度で未使用の十数兆円を使えばいいのでは」としている。
共同通信がよくこのコメント乗せたな、とは思うが実態はこんな程度である。 と言うかこの部長さん、私が言いたい事を全部言っていた。 中小企業の資金繰り状況を改善するなら財政出動をかければすむ話だ。 そもそも不況下でカネの流れがフン詰まった状態にある(市場の購買意欲の低下により貯蓄率が増加、資金移動が抑制される)状況下で、フローの活性化(=財政出動)どころかその逆をやろうという発想が、どういう構造の脳細胞で出てくるのか全く理解出来ない。

◎モラトリアムでフローを止める事の何がマズいのか。
そもそも銀行にとって預金者が預けるお金は「負債」である。 銀行が活動する為に必要な運転資金を預金者から「借り」て、その資金を市中に貸し出す。 返済期限が来たら銀行は金利混みの返済金を受け取り、そこから預金の原資と預金金利を預金者に「返す」。 預金金利と貸し出し金利の差額が銀行の収益となる訳だ。
(ここでは、説明が面倒なので債券購入に寄る資金運用等の側面は置いておく。)

◎ここで市中の債務者にモラトリアムが施行されるとどうなるか。 銀行への資金流入が無くなるため、銀行は預金者や支払先(=債権者)への支払いに支障をきたす。 資金運用によって利益を得る銀行にとって手持ちの資金は「死に金」でしかないため、銀行は日々の支払い業務に支障を来足さないギリギリのレベルの資金だけを手元に残し、残りは債権の形で市中に放出しているのだ。
銀行の資金回収が出来なくなれば当然預金者にも影響が出る。 銀行の業績悪化で取り付け騒ぎが起こるのは、資金回収が滞って預金者への支払いが出来なくなる前に、我先に自分の預金を現金化して確保しようという心理から起こるものだ。
これをわざわざ意図的に起こそうと言っているのだ。 アホとしか言いようが無い。

◎本来のモラトリアムは銀行破綻や大量の不良債権の回収不能、取り付け騒ぎ等が既に発生し、銀行の資金繰りが致命的に悪化した状況下で「銀行の資金回収と銀行からの資金支払いを停止し、その期間中に政府なり日本銀行なりが自体の沈静化に必要な現金を市中銀行に供給する」為に行う、言わば財政出動の時間稼ぎである。 つまりモラトリアムの発令には「銀行・金融セクターの資金移動に問題がある」と言う前提で行うものであり、一国の大臣がこれを口にした時点で「日本の金融セクターはヤバい」と取られて当然である。

◎個人的にはこれ、即時辞任要求が出されてもおかしくないレベルの失言だと思うのだが…というか亀井の頭の中には小泉・竹中路線に対する怨念しか無いようにしかに思えない。
しかし小泉・竹中路線が取ったマネタリズム政策とそれに伴う貸し渋り・貸し剥がし現象は「緊縮財政下で財政出動を行わない」と言う前提の上で行ったものだ。 財政出動を絞ろうという点は現在の路線も同じだが、そこで取られる政策が真逆になってしまっては、金融セクターが取り得る自衛策は貸し出し金利の青天井化しかないではないか。
まあきっと、そんなことすら…下手をすると「金融セクターにおける資金流動性の重要性」すら理解できないまま大臣になったのだろうな、亀井。

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